撫子さん

 
 
「けがはないでござるか?」
  
  「・・・うん」
  
  
  
  
  
  砂に足を取られる。
  
  戦いが終わるまでは気が張り詰めていたのだろうか。
  
  生き地獄から這い上がっても、十分な傷の手当てをしていないままだった。
  
  生きながらにして心は死んでいた。
  
  “痛い”という感情がなかった。
  
  君という光がなかったから。
  
  君を取り戻すまでは・・・・・・・・・・・・
  
  
  
  
  
  だが、今。
  
  君を取り戻し、長い戦いに、自分との戦いにも、決着をつけ、
  
  一番大切な人に、笑顔を向けた時。
  
  倒れかかった己の身体を支えてくれたのは、薫殿だった。
  
  薫殿も、力の入らない拙者の重みに耐えきれず、砂地に沈む。
  
  
  
  
  
  
  
  少ししか時は経っていないが、薫殿の腕の中では幾時にも感じられた。
  
  
  「剣心?」
  
  
  何も言わない拙者に対して、心配そうな声を出す。
  
  その声に、薫殿の着物をぎゅっと握った。
  
  
  「ちょっ、ちょっと!剣心!?」
  
  
  慌てた声を出す。
  
  拙者が薫殿の胸に顔をうずめたから―――。
  
  
  
  後で殴られてもいい。
  
  今、どうしても確かめたいことがあった。
  
  
  
  
  
  トクン・・・  トクン・・・  トクン・・・
  
  
  
  
  規則正しく、薫殿の鼓動がリズムを刻む。
  
  
  
  
  
  
  「―――――生きてる・・・・・・」
  
  
  
  
  
  
  
  小さく呟いた言の葉が伝わったのだろうか。
  
  
  薫殿の目に、涙が浮かぶ。
  
  
  
  「ありがとう、剣心」
  
  
  
  満身創痍の己。
  
  このように呟いた薫殿は、拙者をさらにぎゅっと引き寄せる。
  
  
  
  
  「おかえり」
  
  
  
  拙者の頬にも、光るものがあった――――――――――。
 

常連さんの撫子さんから頂きました、証でございます。

緑との戦いの後、二人が感動の再会を果たすあのシーンですね(T-T)

あとで殴られてもいい、なんて

胸を熱くするセリフです…(大泣)

 

私がこの風花庵を閉鎖しようかと

沈んで、復活を果たした際に

「おかえり」の意味もこめて書いてくださったそうです!

本当に嬉しかったです、有難うございました!

マツケンサンバVを次はマスターだ!(内輪ネタですみません)

2005.7.24

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