*…泣き場所*

泣き場所

 

 

「ふわぁ…。」

「いやーね、大きなあくび」

 

「うるせぇ〜な、出るもんは仕方ねぇーだろ?」

 

神谷道場の縁側に座る男と女の二人の影。

 

「今日はあやめちゃんとすずめちゃんに、何のお菓子作ってあげようかしら…。」

 

「ぼたもち…。」

「あんたに聞いてないわよっっ!!」

「っんだよ!女狐!叩くんじゃねぇよ!」

 

穏やかな日常。(←?)剣心と薫が祝言をあげてから

2ヶ月がたとうとしていたある日。

 

「ぼたもち…か。それもいいかもしれないわねぇ…。

最近作ってなかったから。あやめちゃんやすずめちゃん、喜ぶわ。」

 

「おい…それもそうだがよ、

最近あの二人もだいぶ夫婦らしくなったと思わねぇーか、おい。」

 

二人の目線には剣心と薫。

 

「そうね」

 

恵ははき捨てるようにそう言うと神谷道場の出口へと向かっていく。

 

「おい…。」

左之助は静かに口を開いた。

「ちょっと待てや…。」

 

「何よ」

恵はぶっきらぼうに言う。

 

背は向けたままに。その背中は寂しそうで。何かが足りなくて。

 

「そろそ…泣いてもいいと思うぞ?おめぇはちと我慢がすぎたんじゃねぇーか」

 

「何のことかしら?」

恵はまたぶっきらぼうに言う。

背を向けたまま診療所へと通じる道へと早足で歩き出す。

 

「おい、待てよ」

左之助は恵のあとを追うように立ち上がり早足で歩き出す。

 

「待たないわよ」

 

スタスタとまっすぐなその道を歩く恵。

いつもの蓮っ葉な態度で振り返りもせずに言う。

 

「じゃあ待てとは言わねぇが…。俺の話を…聞いてろよ」

 

 

 

「……。」

黙ってさらに早足になる恵。

 

「俺は納得いかねぇ…。何でおめぇは剣心にお前の想いを言わねぇ?まだ好きなんだろ?」

 

「…あたしはあの人が幸せなら十分なのよ。」

 

はぁ、とため息をつくかのように左之助は恵の後ろ姿を見た。

 

「納得いかねぇ…。俺は相手が誰を好きだろうと相手が自分を嫌っていようと自分の気持ちを最後まで言わねぇ腹んなかに溜めてるのなんて我慢ならねぇ」

 

 

 

左之助は耳が痛くなるくらいの大声で言う。

 

「我慢ならねぇーんだよ!!」

 

「あんたに何がわかるのよ!!」

 

恵はそう言い放つと早足で歩いていた足をとめ

左之助の方を向き、左之助の頬を打つ

 

 

 

――パシッ!

 

 

 

「もっと殴れよ…それでおめぇの気がすむならよ…。」

 

左之助はまっすぐ前を見据えていった。

恵の目からはたくさんの涙があふれていた。

 

「馬鹿…。」

 

恵は流れる涙を拭おうともせずただただ下を向く。

 

「やっぱり我慢してたんだろ…。おめぇはよ…。」

 

ゆっくりと恵に近づいていく左之助。

 

「泣くには…泣き場所が必要だろーが」

 

左之助はそっと恵を抱く。壊れ物を扱うようにそっと、そっと。

 

「泣けよ、思う存分よ。それまで付きあってやらぁ」

 

「左之…。」

 

肩を震わせて泣く恵の長い髪を左之助はスッとすく。

 

「泣きたくなったらいつでも来いや…。ここはおめぇ専用の場所だからよ…。」

 

「え…?」

 

 

 

涙を流している瞳に左之助を映す。

「何度も言わせんじゃねぇよ…。さっきもいっただろ?

俺は相手が誰を好きだろうと相手が自分を嫌っていようと

自分の気持ちを最後まで言わねぇで腹んなかに溜めてるのなんて我慢ならねぇってよ」

 

 

 

自分の腕の中にいる恵の涙を手で拭いながら言う。

 

「おめぇに惚れてんだ」

 

「馬鹿…。」

 

 

 

二人を見守っていた夕日は

 

土へと帰り月が光り輝くころ…。                                          END

 

 

あははは(死)笑うっきゃねぇ小説第一弾!!初心者丸出しですね(爆)いや、これでも一生懸命書いたんですけどね。

HP作り立てのころ、みきさんに贈らせてもらったものデス。少しは成長したかなぁ、私…(笑)         2000.3,27 up

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