*…チャン・イーさん作〜夏祭り〜…*

 

夏祭り

 

  私は、結構前途多難な恋をしていると思う。

 

  足を投げ出して柱にもたれて、彼を見た。

  そして、傍らに置いた麦茶に手を伸ばす。

 

  「行儀が悪い」

 

  振り向きもせずに、彼はつぶやくように言った。

 

「見てないのによくわかりますね〜」

  「気配や音でわかる」

 

なるほど。

ズルズル音を立てて麦茶を飲んだ。

 

「んじゃ、今私はどんな顔をしているでしょうか?」

 

  ぱたん、と本を閉じて私のほうを彼は振り向いた。

 

  「見ちゃだめじゃん、蒼紫さまぁ」

  「表情を読むのは難しいな」

 

  静かに立ち上がって私のそばに来た。

  そして、膝をついて私の顔を覗き込んだ。

 

  「ずいぶんムッとした顔をしているんだな」

  私の前髪に指先をのばす。

 

  蒼紫様の動きは、いつも音がないな、と思う。

  ほんの少し、周りの空気が揺れる感じがするだけ。

  最近まで、その空気に血の匂いが混じっていたけど、今は感じない。

 

  「誰かさんのせいでしょ」

 

  指先がピクリ、と震えてまた彼は私の顔を覗いた。

  「本を読んでいただけだぞ」

 

  「一日中、読んでるつもり?」

  「・・・・・・」

  「・・・・・・」

  「ふくれっつらになった」

  「・・・・・・」

  「面白い」

 

  私の眉がキリキリと上がる。

  彼は私の頭をなでながら、くすくす笑った。

 

  「分かった。悪かった。何をしたい?」

  私しか知らない、彼の笑顔。

 

  「とりあえず、今日はお祭りなんですけど?」

  「ん」

 

  彼は短く答えて、私から離れると庭に面している障子を開けた。

  陽はだいぶ西へと傾いている。

  小さなお囃子の音も聞こえてくる。

  夕日のまぶしさに、彼は目を細めた。

 

  「もうすぐ秋なんだね」

  「そうだな」

 

  私は立ち上がった。

 

  「今からなら盆踊り、間に合うよ」

  「そうか」

  「蒼紫さまも踊るのよ?」

  「・・・俺はいい・・・」

  「踊るの!」

  「勘弁してくれ」

  私は声を上げて笑った。

  小さな声で拒否をする彼の姿がおかしかった。

 

  「じゃ、いいや。綿飴買ってくれる?」

  「それで許されるなら」

  「お面と飴細工もね」

  「・・・・・」

 

 

  私は、結構前途多難な恋をしていると思う。

 

 

  「ほら、浴衣に着替えて来い」

  「ゆかたぁ?」

  「折角行くのに、その格好じゃつまらないだろう?」

  「ふーん」

 

  誰がつまらないの?

 

  「見たいの?私の浴衣姿」

  「・・・・・」

 

  返事は無かったけど、彼の頬が一瞬赤くなったような気がした。

 

  「んじゃ、着替えてこよっと」

 

  でも、幸せに向かう前途多難なら、いいのかなとも思う。

  どうしたって彼と自分の幸せを願っているのだから。

  多少、時間がかかっても、ね。

 

 
 
 

END

んきゃー!もうアップが遅くなって申し訳ないです(><) チャン・イーさんから頂きました蒼紫×操小説でした!(握りこぶし)

チャンさんには剣薫、さのめぐの小説もご投稿して頂きましたが、蒼操もまた、いいですねぇ…(うっとり)

本当にアップが遅れてしまって申し訳ないです(><)

本当に嬉しいことに、たくさんの方々からご投稿して頂いているので

どうしても順番どおりにしていると、アップに時間がかかってしまうんです(@@)土下座!!(涙)

蒼紫様の盆踊り…ありえないけど見てみたいですね(笑)

眼福ですよね、ある意味…!

踊る蒼紫!!!

うーん、見てみたい。

 

ほんと、この二人には幸せになって欲しいデス。

そんなふうに思った、素敵な小説でした。

チャンさん、素敵な小説有難うございました★

大切な宝物です。

 

          2004.10.5

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