きみのゆめをみる*

  
 
  Dream of you ―君の夢を見る―
 
  「剣心!剣心!」
  「う・・ん・・あ、薫殿。どうしたでござるか?こんな夜中に・・」
  「どうしたもなにも、剣心、うなされてたわよ」
  「え・・」
 
  あぁ・・またあの夢だ・・
  毎年、雪が降ると、あの夢を見る・・
 
  「起こしてしまって悪かったでござるな。おやすみ。」
  「ちょっとまって。どんな夢だったの?」
  
薫は、俺にたずねた。
  俺がうなされる夢なんて、あれしかないとわかっているくせに・・
  
「あの・・夢・・だったの・・・?」
  「あぁ。」
  「巴さんの・・・?」
  「・・・・・・」
  
俺は、だまってうなずいた。
  
「わかった。剣心・・無理しないでね。またうなされてたら起こすから。」
  「なにも、無理なんかしてはおらんよ。」
  「してる!絶対無理してる!我慢してる!」
  「してないって・・・」
 
 うそだ・・本当は、泣きたいくらい悲しいくせに・・
  どうして俺は、いつもこうなんだろう・・
  
「私の前でくらい、無理しないでよ!」
  「え・・・?」
  「私は・・剣心に、本音で、接してほしいの・・!」
  「薫殿・・・いいのでござるか?」
  「そう言ってるじゃない!!」
  
薫は、赤面した。
  その顔が、あまりにもかわいかったもので、俺はわらってしまった。
  
「な、なによぅ!笑う事ないじゃない!!」
  「い、いや、失礼。あまりにもかわいかったものだから・・・」
  「もう!!・・せっかく真面目な話してたのに・・・」
  「すまんでござる」
  「まぁ、いいわ。ほんとは泣きたいんでしょ!?」
  「いや、おもいっきり笑ったら泣きたい気分なんて、どこかにふっとんでっ
   たでござるよ」
  「ナニソレ!」
  「でも・・薫殿・・ありがとう・・正直いって、嬉しかった。」
  「私は、本音を言っただけよ!」
  「そうでござるか・・では、今度こそおやすみ!」
  「ちょっと待って!!」
  「なんでござる?」
  「剣心、巴さんのこと、忘れようとしてない?」
  
さすがは薫・・お見通しか・・
  
「あぁ・・」
  「なんで?」
  「なんでって・・そりゃあ・・」
  「私のことなんか気にしなくっていいのよ?」
  「は?」
  「だって、巴さんのこと、剣心が忘れてしまったら、巴さん、独りぼっちじ
  ゃない!そんなの可哀想よ!」
  「心配せずとも、巴は、拙者なんかいなくても、清里殿と、仲良くやってる
   でござるよ」
  「もぅ!そういう問題じゃないの!!剣心は、巴さんを愛してて、きっと、
   巴さんも剣心を愛していたはずよ!その愛した人が、自分を忘れてしまった
   ら、どう思う?とっても寂しいでしょ?」
  
薫・・君は優しいんだな・・
  
「薫殿には、巴の気持ちが、良くわかるんでござるな」
  「そりゃそうよ。同じ男を、愛した女だもの!」
  「そうでござるな。 でも・・いいんでござるか?」
  「いいもなにも・・私は、今の剣心が一番好きなの!なにかひとつでも欠け
   ちゃイヤなの!それが巴さんへの思いでも!!」
  「薫殿…」
  「というわけで、巴さんのことは、忘れなくて良し!」
  「あぁ・・・ありがとうでござる・・」
  「じゃあ、こんどこそおやすみ!」
  「おやすみでござる」
  
  +++
  
  雪が降ると、思い出す・・
  
  この手で殺めたあの人を・・
  
  真っ白い雪の中で、去ったあの人を・・
  
  でも、今は・・
  
  薫という、かけがえのない存在が、ここにいる・・
  
  そして・・こんどこそ、この人を、幸せにするよ・・
  
  見ていてくれ…初めて俺が愛した人・・
  
  「おやすみ・・薫・・」
  
  今度は・・薫の夢を見れそうだ・・・
  
  
  
  
 
  

                               END

薫殿いい女だよ、小説ですね…!

風花庵四周年のお祝いに、と頂きました。

 

私は、今の剣心が一番好きなの!なにかひとつでも欠け

ちゃイヤなの!それが巴さんへの思いでも!!

 

 

こりゃ名言ですね…。

嫉妬<剣心を思う気持ち

が素直に出ている薫殿です。

 

ちなみに風花庵連載の君の声が聞える、略してキミコエ(←何流行らそうをしてるの私)

の薫殿はまだまだ割り切れない弱い部分を強調して

描いてます。(笑)

 

巴凪さん、有難うございました★

 

2004−12−22 up

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