tuさん作

儚い誓い

 

雨が降ってきた。

 

  目の前に広がる血の海。自らが手にする血にまみれた刀。

  「帰ろう」

  刀を鞘に戻し、暗闇より深い闇の中に消える。

 

  自分がしてきたことを間違いだと思ったことはない。

  自分がしてきたことが正しいとも思ったことはない。

 

  考えて考えても行き着くところは、闇の中。

 

  「いつまで人を殺める気ですか?」

  帰るといつも、真っ先にこの女性は聞いてくる。答える気にはなれない。

  自分でも分からないのだから。

   

  「あなたのそばにいさせていただきます」

  いつもと変わらない無表情で彼女は言った。

  自分の中で答えが決まった。

   

  この女性だけは斬ったりしない。

  誓った。自分はそう誓ったはずだった。

 

  それは儚い誓いだった。

 

  淡い幸せはこの手から抜け落ちた。

 

  彼女がいなくなってからも自分は刀を振るい続けていた。

  新時代がくるまでは、新時代がくるまではと言い聞かせながら。

   

  いつかどこかで、自分にもう一度幸せな日々が戻るのだろうか?

  そのときは、決して誰も殺めない。

 

  降る雪は白い。それは悲しみの色に似ている。

 

 

 

 

抜刀斎の独白?でしょうか。情景が浮かぶようなお話でした。

シリアスなムードが出ていますね(><)

このときは果たすことが出来なかった儚い誓いも

流れゆく間で見つけた一番大切な人とともに

守っていってほしいなぁ、と思う管理人でした(笑)

Tuさん、有難うございました。

 

20050216

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