*桜屋春一さんより頂きました。

I Say Little Prayer

 

 

「待ちやがれ!」

   夜の静寂を男達の叫び声が切り裂いた。

 

   今宵は満月。だが、せっかくの月も雲に隠れている。

   おかげで目の前を走っている少女は闇に溶け込みかかっている。

 

   ちょっとでも気を抜けば見失う。

 

  「『待て』と言われて待つバカはいないわよ」

   苛立ただしげに少女は小さく言葉を吐き捨てた。

 

   追う者と追われる者。

 

   両者のスピードは落ちる雰囲気は無い。

   いや、むしろ追われる者のスピードが上がった。

 

  「はぁ!? まだとばせるのかよ!!」

    男達は「ありえねエ!」とわめいた。

 

   その瞬間、少女の姿が消えた。

 

  「おいッ! 見失ったぞ!!」

   男達は慌てて辺りを探し出す。

   近くには一軒の道場が建っていた。

  「もしかして、この中へ逃げ込んだんじゃ・・・?」

 

   と、中の様子を窺おうと板塀からこっそり覗き込む。

    だが、少女の姿は見当たらない。

  「向こうを探すぞ!」と騒ぐ男達の声が道場の前を通り過ぎていった。

 

 

 

  「やれやれ・・・」

   しばらくして、そんな呟きと共に道場の縁の下から少女が這い出て来た。

   パン、パンと着物についた埃を払う。

  「どうやら、撒いたかな」

   ふぅ、と肩の力を抜こうとした。

 

    その時。

 

  「何をしている」

   トン、と。

    背中に何かが当たった。

   それが刀の柄だと分かるのにさほど時間はいらなかった。

 

    つ、と背中に冷たいモノがすべり落ちる。

 

  「お主は何しているのでござる?」

    先程よりもはっきりと、背後から声が響いた。

 

  「・・・・・・ちょっと縁の下で遊んでて」

  「冗談を申すな」

   厳しい口調で返されて少女は口を噤んだ。

 

   相手はかなり出来る。

   すぐ後ろまで来られたのに足音はもちろん、気配さえ感じなかった。

 

   逃げ切れない。

 

  「・・・・・・追われてて、相手を撒くためにここへ逃げ込んだ」

 

   観念したように少女は答えた。

   すると、背中に当たっていた柄は、す・・・、と離れていった。

    少女は目をみはった。

    思わず後ろを振り向く。

 

    雲が切れ、月の光が差し込んできた。

 

    月明かりは儚いまでの美しさを持った少女と涼しげな瞳をした青年を照らした。

 

               ◆  ◇  ◆

 

  「私の名前は『ひばり』。歳は十八」

 

   道場へ逃げ込んだ少女―――ひばりはそう自らを紹介すると軽く頭を下げて

    挨拶をした。

   彼女の前に座った剣心達もそれぞれ自己紹介をした。

 

   ―――――あの後、刀を突きつけた青年である剣心はとりあえず、

   少女を家に上げた。

   茶の間で待っていた薫と弥彦は突然現れた少女に面食らった。

   同じく、案内されたひばりもこの二人の存在に驚いた。

 

  「今時、刀を持っているような侍がこんな少年少女と一緒に住んでいるとはね」

   そう言いつつ、ひばりは剣心と薫達を見比べた。

  「そういうお前こそ、なんで追われてるんだよ?」

   少々、ムッとした弥彦がひばりへ返す。

   ひばりは眉根を寄せると少し考えこんだ。いや、「考え込んだ」というよりは

    目の前に座る弥彦や薫をじっと見つめた。

 

   ふいに視線を落とすと、ぽつりと「玉の輿を蹴ってきたのよ」と呟いた。

 

  「た、玉の輿を蹴った?」

  「そうよ」

    信じられないといった表情の三人にひばりは淡々と答えた。

  「私が下働きしていた大店の息子なんだけど、女に見境の無い人でね。

    この顔を気に入ったらしいわ」

 

   そう言うひばりは確かに美人だ。

 

   長いまつげに縁取られた印象的な大きな瞳。

   紅をさしたような紅い唇。

   ほっそりとした体つき。

   一見、日本人にしては変わった狐色の髪さえ、彼女には良く似合っている。

 

   これで、男が惹かれないわけが無い。

 

   だが。

 

  「妻はもちろん、愛人だって何人もいるのにあのドラ息子、私にまで

    言い寄って来やがったのよ」

  「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 

   ぶっちゃけ、かなり言い方がキツイ。

   コレだけで半分の男達が諦めるだろう。

 

   そんな顔をひきつった顔の剣心達にというか気付かず

  (というか気にも止めず?) ひばりは話を続けた。

  「とにかく、正直助かったわ。ココがなかったら男達に捕まってたかもね。

   ありがとう」

  「別に気にしないで。何もしてないんだし。

   それよりも、これからどうするの? いくら撒いたからって

   今動くとまた追いかけられるんじゃない?」

  「それもそうなのよねー。どうしようかしら」

  「だったら、ウチにしばらくいない?」

 

   突然の申し出にひばりはポカンとした。

  「ほ、本気なの?」

  「当たり前でしょ」

 

   無邪気に答える薫にひばりは眩暈がした。

  (ぶ、無用心過ぎる・・・・・・)

   会って数分しか経っていない、しかも「追われている」なんて語る

    うさんくさい人物をカンタンに泊めるなんて・・・。

 

   ひばりは目の前に座る彼女に気付かれない程度に小さく苦笑した。

   こんなに人が好い人は逃げてきた店の店主以来だ。

 

  「負けたわね」

  「え?」

  「何でもないわ。それより、ココへ本当に泊めてもらっていいの?」

  「全然構わないわ。 好きなだけいてちょうだい!」

 

   はしゃぐ薫にひばりは小さな笑みを浮かべた。

 

               ◆  ◇  ◆

 

   突然の美少女の出現に道場に来た左之助と恵は目を丸くした。

 

  「嬢ちゃん、また拾ったのか」

  「相変わらずねー」

 

   二人はそれぞれ自分の意見を言うとお茶を啜った。

 

  「だって、困っている人を放っておけないわよ」

   薫は唇を尖らせながら、反論した。

   隣りに座った剣心が「まあまあ」となだめる。

  「そこが薫殿の良いところでごさるよ。実際、ひばり殿も感謝しているようで

   よく働いてくれるし」

 

   神谷道場に居候するようになってからとうもの、ひばりは本当に

   よく働いた。

   炊事、洗濯、掃除となんでも器用にこなした。

  「まるで剣心が二人いるみたいだぜ」

   弥彦はニヤニヤと笑いながら薫を見やる。

  「ちょっと、弥彦! なんでそこで私を見るのよー」

  「別に〜」

 

   弥彦は意味ありげな笑みを浮かべながら、あさっての方を向いた。

 

  「もう! どうせ私はひばりさんみたいに器用じゃないわよ!」

  「私は『器用』なんじゃなくて、慣れてるだけよ」

 

   ふいに頭上から声が降ってきて、薫は肩を跳ね上げた。

  「ひばりさん!」

  「こんにちは♪」

   見上げるように振り向いた薫にひばりはにっこりと笑みを浮かべながら

   ひらひらと手を振った。

 

  「私の親は幼い頃に亡くなったから、食っていくのになんでもやって

   覚えただけ。薫ちゃんもそのうちできるようになるわよ」

  「けど・・・・・・」

  「初めからなんでも出来る人はいない。うじうじと悩むくらいなら

   実際にやってみなさいって。なんなら教えましょうか?」

  「ホントに!?」

 

   ぱぁ、と目を輝かせた薫にぽんぽんと頭をたたきながら「モチロンよ」

   答えた。

 

 

 

  「薫ちゃんってホンット無邪気で可愛いわよねー」

   夕食用の米を研ぎながら、ひばりはいきなり言い出した。

  「・・・は?」

  「『は?』じゃないわよ、『は?』じゃ。・・・うかうかしてるとどこぞの

   馬の骨にもってかれるわよ」

 

   呆れたような視線を向ける彼女に傍らで同じく夕食の準備をしていた

   剣心は眉根を寄せた。

  「ひばり殿、一体、何が言いたい――――」

  「あなた、薫ちゃんが好きなんでしょ?」

 

   あやうく剣心は大根だけでなく、自分の指まで切りそうになった。

 

  「何故、それを知っている」といわんばりにひばりをにらむと、

   ひばりは「見てれば分かるわよ」と溜め息をついた。

 

  「いろんなトコを転々としたから、いろんな人間を見てきてねぇ

   ・・・・・・人を見る目だけは肥えたのよ」

   同時にその人物が何を考えているのか、そんなコトも少し分かる

   ようになった。

 

   だからこそ、ココの人達がどんな人間かすぐに分かった。

   どんな想いを抱えているかも、少しだけ分かった。

 

  「ちゃんと、自分の想いだけは伝えなきゃダメよ」

 

   そう言うとひばりは研いだ米を釜に入れ、炊き始めた。

   彼女がどんな表情をしているかは長い髪に隠されて見えない。

 

   剣心はしばらく無言でひばりを見ていたが、小さく「分かっている」

   と呟くと再び包丁を動かし始めた。

 

               ◆  ◇  ◆

 

   それからしばらくして、薫の様子がおかしくなった。

 

   あれほどなついていたひばりに対して急によそよそしくなった。

   剣心には何か言いた気な眼差しを向けるものの、結局、何も

   言わず無言で視線を外す。

 

  「ねぇ、あんた何かした?」

  「そういうひばり殿こそ」

  「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

   しばらくの沈黙の後、はぁ―――、と盛大な溜め息をついた。

 

   一体、何がどうしたというのか?

 

   わけが分からず、「うーん」と唸っていると、バタバタと慌てた様子の

   弥彦が飛び込んできた。

 

  「大変だ! 薫が男と歩いてる!!」

 

 

 

   東京・下町。

   多くの店がひしめき合い、賑わいを見せるこの街で剣心、弥彦、ひばりの

   三人はとある二人組を尾行していた。

 

  「やはり、『こういう』コトは良くないのでは・・・」

  「何言ってんだよ、薫が男と二人で歩いてるんだぞ! 気にならねぇのかよ」

  「まったく、ココまで来てくだくだ言うんじゃないわよ」

 

   そんな三人を尻目に薫と男は茶店に入った。

   慌てて剣心を引っ張り、弥彦とひばりも入っていった。

 

  「薫さん。今日こそは返事をもらえる?」

  「・・・それは」

  「僕の側にいてくれるだけで良い。君が好きな剣道だって続けて

   構わない」

 

   喧騒の隙間から聞こえてくる会話はかなり雲行きが怪しい。

   薫達の近くに座った剣心達・三人はサー、と顔が青くなった。

 

   男は必死に口説いているが、薫はあいまいな返事を返すのみ。

   次第にイラだってきたようで男が声を荒げた。

  「あの赤毛の男がそんなに良いのかい。君と最近現れた美人とで

   ふらふらしているようなヤツだよ!」

 

   ―――――――――――!!

 

   赤毛の男と最近現れた美人。

   間違いなく、剣心とひばりコトだ。

 

   剣心が薫とひばりの間でうろうろしている。

   はっきり言って、剣心とひばりからすれば、まったくもって身に覚えが無い。

 

  「ねぇ、どういうコトよ?」

  「拙者にもさっぱり・・・・・・」

  「お前達、割と一緒に家事をやってたから薫から見れば

   そんな風に見えたんじゃないか・・・?」

   そう言う弥彦も珍しく自信が無さそうだ。

 

   実際、ひばりは来た当初から剣心と一緒に家事を手伝ってきた。

   だが、その頃の薫の態度は今まで通りだった。

 

   首をかしげる三人の耳にパシンッ、と痛々しい音が響いた。

   それが薫が男を平手打ちした音だとすぐに分かった。

  「剣心のコト、何も知らないのに勝手なこと言わないで!」

  「薫さん・・・・・・」

  「・・・・・・・・・ごめんなさい」

 

   叩いた手を胸元で握り締め、薫はうつむいた。

   男は叩かれた頬を押さえながら、呆然と薫を眺めた。

 

   だが、ゆっくりと立ち上がると急に薫の腕を掴んだ。

  「っ、ちょっと・・・」

  「こっちが下手に出てればつけあがって」

  「え・・・?」

 

   男は無理矢理、薫を連れて行こうとする。

 

   だが。

 

  「その手を離すでござるよ」

 

   低く響いた声に薫は目を見はった。

  「剣心!」

  「その手を離せ」

 

   口調が厳しくなる。

   視線は氷のように鋭く冷たい。

 

  「もしかして・・・」

   男が薄ら笑いを浮かべた。

 

  「お前は薫さんの何だ? 恋人か? 想いも告げてないのに、まさかな」

  「・・・・・・」

 

   黙り込んだ剣心に薫の表情は一瞬、哀しげに歪んだ。

 

  「あなたって、いつもそうよね」

  「え・・・?」

  「そうやって何も言ってくれない。私が一人で空回り。

   あなたは自分の気持ちを一言も言ってくれない!」

  「―――――、・・・・・・」

  「どうして言ってくれないの!?」

 

   そんな言葉をたたきつけた後、薫は店を飛び出した。

 

  「薫!」

   とっさに弥彦が追おうとする。

   だが、後ろにいたひばりから肩を掴まれ、止められる。

 

   ひばりは立ち尽くす剣心へ近づいた。

  「何してるのよ」

  「・・・・・・」

  「早く追いに行きなさいよ」

  「しかし・・・」

  「『しかし』もクソもないわよ!」

  「ひばり殿・・・」

  「あなたは薫ちゃんが好きなんでしょ。だったら、その気持ちくらい

   伝えなさい!」

  「―――――――――――――」

  「世の中、伝えたくても伝えられない気持ちだってあるの。

   ・・・・・・・でも、あなたは違うでしょう!?」

 

   あの娘、待ってるのよ。

 

   袖をにぎり締め、うつむく。

   か細い声だが、確かに剣心の耳へと届いた。

 

   袖から手が離れたと同時に剣心は街中へと走り出した。

 

  「ひばり」

   元々の原因であるあの男がひばりへ声をかけてきた。

   弥彦は思わず、目を見はる。

   だが、ひばりはさしたる動揺もなく答えた。

  「私はあなたのそういう見境のないところが嫌いです」

 

   たとえ、一人の女を狙っていても別の女に平気で手を出す。

 

   そんな女に見境のないところが。

 

   栄作の若旦那、と。

   かつて自分を拾ってくれた店主の息子たる男をひばりはそう呼んだ。

 

               ◆  ◇  ◆

 

   最初はただ、彼が落とした物を拾っただけだった。

 

   だが、道で偶然会ったりとたびたび顔を合わすようになった。

   気さくな雰囲気の彼につい、話してしまった。

 

   想いを告げたのに、相手は返事をくれない、と。

 

   今まではたいして気にも止めてなかった。

   なかなか言葉にしないのが相手の性格だし、気長に

   待つことにしていた。

 

   けど、最近居候し始めた少女と親しげに話す様子に、ドクッと心臓が鳴った。

 

   彼女のコトは嫌いじゃないのに、あの光景を思い出すたびに

   憎たらしくなった。

 

   そんな自分に嫌になっていたら、彼は「気にすることない」

   と言っていくれた。

   それが人間だ、と。

 

   それ以来、彼とぐっと親しくなった。

   いや、今考えたら親しくなり過ぎたのかもしれない。

 

   急に彼が「そんな男は忘れて、僕と一緒にならないか?」と

   突然、言い始めた。

 

   当然、断っていたものの、彼もなかなかしぶとかった。

 

   結局、今日までずるずると引きずってしまった。

   今日こそキッパリと断ろう、と決めていたのに。

 

   展開は予想外なコトばかりで・・・・・・。

 

 

  「薫殿!」

 

   急に腕を引かれてバランスを崩す。

   ぐらりと傾いた体は剣心の腕の中へ入ってしまった。

 

  「離して!」

  「嫌でござる」

  「・・・離してってば!」

 

   逃れようともがくが、腕が外れる気配は無い。

   無駄だ、と悟ったのか薫はもがくのを止めた。

 

   おとなしくなった彼女を見て、剣心は口を開いた。

 

  「薫殿、一つ聞いてほしいコトがあるのでござる」

  「・・・・・・・・・・・・」

 

   薫は固く目を閉じた。

   「気持ちを聞きたい」と言ったのは自分だが、いざそんな場面に

   なると怖くなってくる。

 

   ――――――もし、「最悪」な場合の言葉だったら?

 

   だめ、怖い・・・!

 

  「拙者・・・・・・」

 

   薫殿が好きでござる―――――

 

  「へ・・・・・・?」

  「いや、だから・・・」

  「ほんとに? 本当に剣心も・・・・」

  「もう言わないでござるからな」

 

   そう言うと、剣心は薫と向き合うと耳元にそっと一言ささやいた。

 

               ◆  ◇  ◆

 

   あの男―――栄作はひばりを追いかけていた張本人だった。

 

   ひばりが神谷道場に逃げ込んだのを知り、その身内の者を篭絡させて

   彼女を手に入れようとしたらしい。

   結局、その身内の者である薫も気に入ってしまい、計画は失敗したらい。

 

  「あんなコトもあったし、もう追いかけてこないでしょ」

 

   それでも、まだ追いかけてきたら少しはその根性

   認めてあげるんだけどねぇ、と。

   

   そんなひばりの笑い声は茶店に響いた。

 

   あの騒ぎの後、新たな職を探していたひばりにあの茶店の女主人が

   ウチで住み込みで働かないか、と申し出てきてくれたのだ。

   どうやら、店内で剣心を叱り飛ばしたその気性を気に入ったらしい。

   それからひばりは神谷道場を出てココで働き始めたのだ。

 

  「それならいいけどな」

   剣心、薫と一緒に様子を見に来た弥彦は団子をほお張りながらも、

   彼女の様子にホッとしたようだった。

 

   弥彦は剣心達が出て行った後、ひばりが栄作と話していた時のコトを思い出して

  いた。

 

  『伝えたくても伝えられない、か。

   まさしくお前の気持ちといったところか』

  『何のコトです?』

  『とぼけるな。お前があの下働きの男に惚れてたのは

   知っているんだ』

  『・・・・・・・・・・・・』

   沈黙を貫く彼女に栄作は更に続けた。

  『あの男は働き者だからなぁ。親父も気に入っていた。だが、あいつも

   今じゃ妻を持つ身だ』

  『知っています。幼馴染みの方でしたよね』

  『だったら、早く忘れて僕と一緒になれば楽に暮らせるぞ』

  『あなたの場合は妾でしょう。そんなの願い下げです。それに―――』

 

   そんな簡単に忘れられたら、どんなに楽だったでしょうね

 

  『・・・・・・・・・言ってくれるな』

   仕方ない、と彼は戸口へ向かって歩き出した。

  『どうやら今回は諦めた方が良さそうだ』

  『「今回」だけではなく未来永劫諦めてください』

   ははは、と栄作は声をたてて笑うと「じゃあな」と片手を軽くあげて

   のれんの向こうと去っていった。

 

  「弥彦、どうしたの?」

   目の前にひばりの顔があり、思い切り慌てた。

  「何、人の顔見て慌ててるのよ」

   失礼ねー、とブツブツ言いながら剣心達と話を再開した。

 

   ひばりと栄作とのこのコトは剣心にも薫にも言えなかった。

   なんだか、言ってはいけない気がした。

 

 

   実る恋に散ちゆく恋。

 

  『心の底から好きだったから、本当は想いが通じようが通じまいが関係無いのよ』

 

   弥彦がたった一言だけ「想いが通じなくて、辛かったか?」と訊いた時、

   ひばりが答えた言葉。

 

  『本当に好きだったから、あの人にはいつも笑っていてほしいのよ』

 

   それが恋ってもんでしょう?

 

 

はい、とっても長編の、盛りだくさん素敵小説でした〜!!

とっても読み応えがありましたねぇ、満腹です!

ひばりさんと栄作さんもいい味でてるし、

アニメでこんな話があったら素敵なだぁぁ。

ひばりさん好きだなぁ特に。

姉さん風で。剣心にも言いたいことズバズバいっちゃうし(笑)

 

本当にストーリー性があっておもしろかったです!

また読みたいなぁ♪♪

美咲も春一さんを見習いたいと思います(><)

 

素敵な作品有難うございました^^

 

<四周年祝い品として 20041115>

 

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