Mermeid Song〜君に会えた奇跡〜

 
 
君に会えたのは偶然でも理屈でもなくて運命…―。 
  君に会えたのは奇跡なんだ―。 
  
  「誰…?」 
  薫が剣心のことを忘れてしまった。 
  「神谷…お前何の冗談だ?」 
  剣心はそれを信じられなくて冗談だと言った。けど薫は… 
  「本当に分からないんですけど…」 
  
そこへしずくと空がやってきた。 
  「薫!風邪、大丈夫?」 
  「しずくちゃん。空ちゃん。うん大丈夫だよ^^」 
  どうやらこの二人のことは覚えているようだ。 
  剣心のことだけを忘れてしまったのだろうか…
  「ねぇ二人共…この人誰なの?」 
  薫が二人に剣心のことをきいた。 二人はえっという顔をした。 
  「誰って…緋村先生じゃない。うちらの担任の」 
  しずくが説明する。 けど薫は?マークをとばしている。 
  「そうなんだ…全然覚えてないや…。」 
  「薫…。あんたどうしちゃったの?」 
  空が心配そうに言う。 すると剣心が薫の腕をガッと掴む。 
 
  「おぃ神谷!俺のこと覚えてないだって?ふざけるな!おぃ!」 
  「ヤッ…」 
  「先生辞めて下さい!」 
  しずくがすかさずとめた。薫の頭を空が優しくポンポンと撫でた。 
  ガクガクと震えている。 剣心は放送で呼ばれたので職員室へ戻っていった。 
  「薫…あんたどうしたの?」 
  しずくが薫にきいた。 薫の目には少し涙がたまっていた。 
  
「分からない…けどなんだかあの人を見ると…」 
  ゆっくりと話し始める。 
  「頭が痛くなってつらいの…」 
  「まぁ何がなんだか分かんないけど…ゆっくり思い出しなよ」 
  空が優しく言う。 薫はコクリとうなずいた。 ひとまず3人は教室に戻った。 
 
 
*
 
 
昼休み。 
  しずくは宗次郎にこのことを話した。 
  「そうなんですか…緋村先生だけ忘れてるなんて…。」 
  「どうしてだと思う?」 
  しずくがきくと、宗次郎がうーんと考え始める。 
  「二人の間に何かあったんじゃないかな?」 
  しばらく考えると口を開いた。 
  「何かって…?」 
  「それは分からない…。けど記憶喪失にさせるようなこと…」 
  うーんと二人は考えていた。 
  キーンコーン… 
  「あっヤバッ!授業!」 
  「確か次四乃森先生ですよ!急がないと!」 
  二人はパタパタと走っていった。 
  
*
  5時間目。 
  薫はポーッとしていた。 そして眠気がでてきたので寝ることにした。 
  【薫…】 
  誰―…?この声どこかで聞いた…。 どこだったけ? 
  【薫…あなたは人間じゃない…あなたは人魚…】 
  
人魚…? わたしが? なんで? 
  【人間に恋してはいけない…】 
  どういうこと…? わたしが好きな人…。それは…。 
  【あなたは…人魚…人間に恋しては…ダ…メ…】 
  いやだ…
  何…この感じ… イヤ…頭が痛い―。 
  助けて…!緋村先…生…
  ガターンッ! 
  「キャアアッ!先生!神谷さんが!」 
 
薫は突然倒れた。 保健室へ運ばれた。薫は保健室のベッドで寝ていた。 
  目が覚めると保健の先生高荷恵がいた。 
  
「あら。目が覚めた?」 
  「ここは…?」 
  「保健室よ。授業中に倒れたのあなた。軽い貧血ね」 
  紙に何か書きながら言った。 
  「じゃ今担任の先生を呼んでくるからね。大人しく寝てなさいよ。」 
 そう言って恵は保健室から出て行った。 薫は再びベッドに寝転ぶ。また目を閉じる。 
  
【薫…】 
  また、あの声だ…誰? 
  【戻ってきて…もうすぐ…】 
  もうすぐ何が起こるの? 戻るってどこへ? 
  【あなたは・・もうすぐ・・人魚に・・】 
  なに? どういうこと? 人魚に戻る…? 
  どくん 
  薫はうすっらと目を開けたベッドから降りた。 
  そして誰かに導かれるようにフラフラとどこかへ向かった。 
  しばらく歩くと…ある海岸があった。 Mermaid海岸。 
  ザザン 
  薫は階段を下りた。 
  
*
 
  一方保健室では恵と剣心が入ってきた。 
  「いない!どこへ行ったのかしら!?」 
  恵がかなり驚いた顔で叫んだ。 剣心は汗がたれてきた。 
  「帰ったようではないわね…カバンが置いてあるし…」 
  放課後、しずくと空が持ってきたのだ。剣心はとっさに走り出した。 
  「ちょっと!緋村先生!?」 
  剣心は無我夢中である場所へと向かった。 
  その場所は …”Mermaid海岸" 
  
  歌が聞こえる 
  「薫っ!」
剣心はその名を呼んだ。 
  薫は歌を口ずさみながら海へ入っていく。 
  剣心はその後を追う。 
  「薫ーーーっ!」 
  ガシッ剣心は薫を抱きしめた。このままでは
  薫がどこかへ消えてしまいそうな気がしたから 剣心はその名を呼んだ。 
  薫は歌を口ずさみながら海へ入っていく。 
  剣心はその後を追う。 
  「薫ーーーっ!」 
  ガシッ 
  剣心は薫を抱きしめた 
  このままでは…
  薫がどこかへ消えてしまいそうな気がしたから…
  
「緋村先生?」 
  目がうつろだったが、意識はあるようだ。 
  そして剣心の名前を… 
  「剣心でいい!お前…どうしてここに?」 
  薫を抱きしめながら言った。 
  もう水の中に入っており、剣心はズボンが薫は靴下などがビショビショだった。 
  二人はしゃがみ込む。 
  「分からない…けど、声が聞こえて…」 
  「声?」 
  二人が話しているとどこからか声が聞こえた。 
  「薫…。」 
  その声は綺麗な声だった。夢できいた声―…。 
  「誰…?」 
  「薫…その人が…お前が愛した人ね…?」 
  女の人が出てきた。 
  そして薫に問いかける。 
  その問いかけにコクリと薫はうなずいた。 
  「そう…けどあなたは忘れなければいけない…人間に恋してはいけないわ。」 
  
女の人がそう言うと薫の体が自然に動く 剣心の腕の中からスッと消えるように 
  「薫ーっ!」 
  叫んだ。声が嗄れるぐらいに。 
  薫の目からは涙が垂れていた。 
  そして涙を流しながら、剣心の方を向いて少し微笑んだ。 
  
「剣心…。」 
  そしてゆっくり話し始めた。 
  「わたしは…帰らなければいけません。あなたとは少しお別れです。」 
  剣心の目からも涙が溢れてきた。 
  「けど…もし、もう一度会えたならその時は…わたしを人間として、一人の女として…」 
  薫が少し剣心に近づく。 そして顔を近づけていく。 
 
  「わたしを愛してくれますか…?」 
  涙が水面に落ちる。海には空が写っていて綺麗な青だった。 
  「もちろんだ…。今も愛してる。」 
  
剣心も今までの気持ちを全て言った。薫はふっと微笑み、剣心にキスをした。 
  そして涙が浮かんだ目でニッコリと微笑み言った。 
  「きっと…いつかあなたに会いに行きます。それまで…待っていて下さい。」 
  剣心も涙が溢れ、とまらなかった。 
  「あなたのキス…嬉しかった。わたしもあなたを愛しています。」 
  パアアッ 薫が人魚に変身した。 
  その姿はとても美しかった。 
  今まで以上に。 
  そしてその美しい姿で海の彼方へ消えてしまった。 
  「薫・・薫ーっ!」 
  剣心は叫んだ。 
  薫は人魚だった。 
  あの日初めて会った二人。 
  二人はまス会うことを約束し、このMermaid海岸で別れた。 
  二人が会えたのは運命だから…きっとまた会えるだろう。 
  この海で。

 

【最終章】

ザザン 
  波の音が聞こえる 君と別れたこの海岸。 
  いつもと変わらない。 
  何にも変わらない毎日。 
  いつもどおりの毎日。 
  けど君と過ごした日々は今でも覚えてる。 
  君は1年前ここで消えてしまったけれど…
  また会えるよね? 
  君に会えたのは奇跡で 運命だった。 
  空は真っ青で手をのばせばとどきそう。 
  海は空が写って青く見える。 
  潮風が気持ちいい。 
  「剣心…。」 
  声がした。 どこか懐かしい綺麗な声。 
  ゆっくりと振り返ると… 
  愛しい…ずっと愛しかった… 
  君がいた。 
  「薫…!」 
  俺は思い切り君を抱きしめた。 
  君は笑った。 
  ザザン 
  波の音が聞こえる。 
  君と出会えたのは奇跡―。 
  声が聞こえる。 
  歌が聞こえる。 
  君の・・。 
  二人の出会いはこの・・海岸で。 
  MermaidSong〜君に会えた奇跡〜
 

 

蓮さんから頂きました。かなりの長編でした。有難うございます。

かなりパラレルなお話でしたけど、楽しませて頂きました(^^)

有難うございます。

 

蓮さんの作品がもっと読みたい!という方は

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2005.3.17

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