*…緋色の光by心月さん…*

「緋色の光」

 

空が、赤く染まっていく。

いつもの橋の上、いつもの二つの影が並んで伸びる。

昨日までと同じ風景。

でも、その心は昨日とは違う。

 

明日、薫は「神谷薫」ではなくなる。

大好きな人と、生涯一緒にいると、約束するために。

 

ずっと、望んでやまない事だったから、うれしくて仕方がない。

でも、素直に喜べない自分がいる。

 

並んでいた二つの影が、微妙にずれはじめた。

それに気付いた先行く影が、ふと動きを止める。

「薫殿、どうしたでござるか?」

後追う影も、動きを止める。

「ん……、なんでもないよ。」

 

「嘘でござるな。」

 

流れる沈黙。

冷たくも優しい風が、剣心の髪と薫の心を揺らす。

 

「何か、あったでござるか?」

揺れる心を打ち明かすか否か薫は悩み、そして口を開いた。

 

「……私ね、すごく幸せなの。剣心と一緒にいられて。

 でもね、これからの事考えると、少し、不安になるの。」

 

「不安、でござるか?」

 

「結婚するって事は、今までよりもたくさん、たくさん一緒にいられるって事でしょ?

その分だけ、お互いの事が見えてくると思うの。いい所も、悪い所も……。」

 

「それは人が関わっていく上で良いことでござるよ。」

 

「そうなんだけどね、もし、私が剣心に嫌な所見せちゃって、それで、

……剣心が、私のこと、嫌いになるんじゃないかって思うと…。」

 

そこまで言うと、薫は赤くなった顔を伏せた。

赤い光のおかげで、剣心には分からない様だった。

空が赤くて助かった、と思った。

 

「…拙者は、たとえ、薫殿の嫌な所が見えても、

それも薫殿の大切な一部だと思うでござるよ…。」

 

薫は顔を伏せたまま、また赤くなった。

「でも、やっぱり剣心には、私のいい所だけ見ていて欲しい。」

 

赤い光の方を向いて、剣心は淡々と、話し出した。

「欠点のない人間など、この世にはいないでござる。

薫殿だって、拙者の過去を受け入れてくれたでござろう。

抜刀斎でも居て欲しい、と。

・・拙者はうれしかったでござる。

 拙者もそうでありたい。それでもいい、と受け入れたい。

 薫殿になら、それが出来ると、思っているで…ござるよ。」

 

今度は剣心が顔を伏せた。

剣心もまた、空が赤くて助かった、と思った。

 

「私、剣心の思っている様な人間じゃないかもよ?

料理は苦手だし、寝相だって悪いし…」

 

「互いの足らない所は、補い合えば良いでござる。

それに、薫殿の寝相の悪さならもう知ってるでござるよ。」

 

薫はそれを聞くと、もう、と言って笑った。

剣心もつられて微笑む。

「やっと、笑ってくれたでござるな。」

 

「え…?」

 

「拙者は、薫殿の笑顔が好きでござる。

 無理して演じた薫殿よりも、素直に怒ったり、笑ったりしている薫殿のほうが、

 好きでござるよ。」

 

いつしか薫の迷いは消えていた。

「剣心、…ありがとう。」

そう言って、もう一度、微笑んだ。

(こちらこそ、)という思いを込めて、剣心も微笑み、そして手を差し出す。

 

 

「行こうか…。」

 

 

空が、赤く染まっていく。

いつもの橋の上、いつもの二つの影が一つに寄り添う。

昨日までと同じ風景。

でも、その心は昨日よりも深い。

 

明日、薫は「緋村薫」になる。

                       END

心月さんより頂きました★すっご〜〜〜〜く可愛い&甘々なお話で、思わず美咲、顔がにやけっぱなしでした〜(笑)

薫ちゃんが可愛いこと可愛いこと♪そして剣心の包容力と幸せそうなことっっvvもう嬉しくなってしまいました〜vv

二人の祝言ネタ、私もうまく書きたいなぁ。心月さん、本当に有難う御座いました^^皆さんも感想はbbsで〜★

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