仮面

仮面―後編―

 

 朝食後、剣心に呼び出された蒼紫は道場の中で剣心と向き合って座ってい
  た。沈黙の睨み合いが続く。先に口を開いたのは蒼紫だった。
  
「……用件はなんだ。」
 
 
「言わずともわかるだろう?」
 
呼び出された理由を知りながらこのような質問をしてくる蒼紫に
剣心は苛立ったように答えた。そしてまた睨み合いが続く。
この雰囲気に蒼紫はため息をついた。その時今度は剣心が先に口を開いた。
  
「昨晩は何をしていた?」
 
 その問いに蒼紫は動じることもなく普通に「部屋に居た」と答える。
  
「誰と一緒にいた?」
 
  先ほどよりも声のトーンを落として聞かれ、蒼紫はやれやれといった感じに
  またため息をつき、ハッキリとこう答えた。
 
  「お前や操に隠れて薫を抱いていたとでも答えれば満足か?」
 
  この答えに剣心は我慢の限界といわんばかりに思い切り蒼紫の胸倉を掴み、
  立ち上がり怒鳴った。
 
  「馴れ馴れしく呼び捨てにするな!」
 
  顔を真っ赤にして起こる剣心を蒼紫は静かに見つめた。
 剣心は蒼紫の余裕のある表情を見て益々腹が立ち、突き飛ばすように手を離した。
 蒼紫は乱れた服装を整え、剣心を見るとすごい剣幕で睨まれていた。
  
「どういうことだ?なぜ薫と一緒に居た?いつからそういう関係なんだ?」
 
  一気に疑問をぶつけ冷静になろうとしたが怒りは冷めなかった。蒼紫はそん
  な剣心を見つつ、答えた。
  
「わかった、全てを話そう。薫、操、そこでは聞こえずらいだろう。中に入れ。」
 
  蒼紫の言葉に剣心は驚いたように道場の入り口を見た。すると真っ青な操と
  申し訳ないような薫が入ってきた。剣心はあまりの怒りに二人の気配に気付
  かなかった自分に驚いた。
  四人で向き合って座ると薫はゆっくり蒼紫を見た。蒼紫は頷き、話し始めた。
   
                  *
 
  「つまり薫殿と蒼紫の関係は京都の決戦のすぐ後、拙者が眠っている間に始
  まり、これまでも何回か拙者達に隠れて昨晩のようなことをしていたと?」
  
あからさまに皮肉を込めた言い方に薫は俯く。すると今まで黙っていた操が
怒りと悲しみを抑えたような震える声で言った。
  
「つまり私の想いは無駄だったってこと?私の想いを知りながら、蒼紫様と
  薫さんは愛し合ってたの?」
 
そこまで言うと操は肩を震わせながら立ち上がった。
  「操ちゃ……」
  「どうしてよ!?」
 
  薫の声を遮り操は涙を流しながら叫んだ。
 
  「どうして!?どうして!?薫さんは緋村が好きなんじゃないの!?どうし
  て私が蒼紫様のことを好きだって知っててこういうことするのよ!?酷
  い……。酷いよ!」
 
  泣き叫びながら出て行こうとすると蒼紫がその手を掴んだ。
 
  「操、話は最後まで聞け!」
 
  だが操は懸命に手を振りほどこうとする。
 
  「離して!離してー!!」
  「俺が薫を脅したんだ!」
  
その言葉に操は動きを止め、剣心は「どういうことだ」という風に蒼紫を見た。
 
  「あ、蒼紫!」
 
  慌てる様に薫が口を出すが、蒼紫は尚も続ける。
  「最初に薫を抱いたのは合意じゃない。無理矢理だったんだ。そして、その
  ことを緋村に言われたくなければ言う通りにしろと。だから薫に責任はな
  い。」
 
 操は座り込み、剣心は怒りに震え、掴みかかろうとするのを薫が止めて言った。
  
「蒼紫は私を好きだった訳じゃなくて、操ちゃんの代わりとして私を抱いて
  いただけなの。わざわざ私を代わりにしたのは、操ちゃんに遠慮してしまっ
  たから……。」
  
「かおっ……」
 
  薫の言葉に蒼紫は何か言おうとしたが薫が何も言うなという風に蒼紫を睨み
  付けた。
 
 
                *
    
 
  「世話になった。」
 
 葵屋の修理が終わり、蒼紫と操が帰る日が来た。あの出来事からなんとなく
  四人ギクシャクした感じからやっと開放されることになり、皆少なからずホ
  ッとしていた。
 
  「じゃあ、元気でね。」
  「うん、薫さん達も今度遊びに来てねっ。」
 
  蒼紫と薫は少し目を合わせすぐに逸らした。そして、蒼紫と操は帰っていっ
  た。本当は操の代わりとしてでなく、本当に薫を愛していたという事実を剣
  心と操に告げぬまま……。
                                   
 
                                        *
 
 
  「薫殿、今夜拙者の部屋に来るでござるよ。」
 
  蒼紫と操を見送り、家に帰ってすぐ、剣心は薫にそう伝えた。
  そして夜、寝巻きに着替え、剣心の部屋の前に来た薫だったが、気まずくな
  り、開けようかどうしようか迷っていた。するといきなり中から腕を引っ張
  られた。恐る恐る目を開けると剣心の腕の中に居た。剣心にジッと見つめら
  れ、薫は目を逸らそうとするが顎に手をかけられ、強引に上を向かされ、口
  付けられる。
  
「んうっ!」
 
  初めての口付けとは思えないくらい激しくされ、抵抗する薫の腰を引き寄
  せ、後ろに押し倒した。薫の髪を結っていた紐が解け、薫の漆黒の髪が広が
  る。
  静かに夜が更けていく……。
 
END
 
 

 

 

 

薫様LOVEさんより頂きました!

仮面の後篇にございます^^

 

掲載遅くなってなってしまいまして

誠に申し訳ないです(><)

 

ここで、薫様LOVEさんのあとがきをご紹介いたします。

 

はい!やっと終了です!蒼紫さんがかなり有り得ないことに・・・。(いや、蒼紫だけ

じゃないけど)しかも中篇に比べてかなり長い!欠点だらけの作品ですいませんでした!

次は現代版の剣→薫やろうかな?(もうやめろ!)

 

なんだか最後は剣心と薫がキャーvな展開になっていますけれどv

蒼紫×薫ってあんまり見ないのですごく新鮮でした。

有難うございました!

 

20050210

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