絆―後編―【空夜優月様より頂きました】 |
『絆〜後編〜』 それは一通の手紙から始まった
剣心に妹と名乗り、薫を襲った女、霞 その霞を守ろうとしている謎の男、志奥 だが、そんなことは剣心にとってはどうでもいいこと 大切な仲間を、愛しき人を傷つけた どんな理由があろうともその事に変わりはない 「志奥、あまりやりすぎるな。死人は出したくない。」 「安心しろ。急所ははずしてある。」 「急所ははずしてあるって、ほとんど虫の息じゃない!」 床に倒れている左之助と弥彦に近寄って 少し涙目になりながら恵は叫んだ 頭からは流血し、わずかに呼吸の音が聞こえるぐらいだ 剣心は再度左之助達の方を振り返り、二人の姿を目に焼き付けた 「志奥とやら。・・・拙者は仲間が傷つけられるのを見るのは 嫌いでござる・・・。」 拳をわずかに震わし、ゆっくりと志奥に視線を戻しながら剣心は呟いた 「だから・・・・拙者はおぬしを絶対に許さない・・・。」 「ならばかかってくるがいい。受けてたつ。」 志奥は待っていたと言わんばかりの笑みを剣心に見せた 「恵殿、ここは少々荒れるかもしれないでござる。弥彦と左之助を連れて 少し離れているでござるよ。」 「え、ええ・・・・」 実際、弥彦はどうにかなるものの、体の大きい左之助を運ぶのは女の恵だけ では、少し無理があった。だが、ここにいたら剣心の邪魔になるし早くこの 二人を治療しなければ命が危ない。恵はそう思いながらまず弥彦を運び、そ の次に左之助を背負い弥彦の隣へと運んだ 一方、剣心と志奥は互いににらみ合っていた 剣心は長年連れ添ってきた逆刃刀を手にして 志奥も腰の剣に手を添える だがそこで、霞が志奥の腕を取った 「志奥!いくらお前でも兄上には・・・・」 「いいからお前は自分の目的を果たせ。俺のことは気にするな。」 「志奥・・・・・」 「霞!薫殿に手を出したらいくらお前でも許さない!」 「・・・・いいえ兄上。これだけは何としてでもやります!・・・志奥 無理をするな。」 「ああ、分かってる。俺よりお前のほうも気をつけろ。」 志奥を見つめる霞の目は薫の方を向いたとたんに優しさから怒りの目へと 変わった。それは体全身が凍るような冷たい視線 「か、霞さん。どうして・・・・」 「言ったはずです、兄上にふさわしいかどうか。覚悟なされよ。」 「霞!」 「・・・・・・いいわ!かかってきなさい!」 「薫殿!?」 「私は剣心が好きなの!この気持ちに嘘はないわ、それを証明するの!」 「・・・・・・・・・・」 「そんな戯言・・・」 霞は左腕を薫に向かって差し出した 薫も襲いかかる霞の攻撃に対するため床にあった 弥彦の竹刀をつかみ構える 霞の腕にかかっている鎖は次第に動き出し、あるものに姿を変えた 薫の目に映ったのは舌を巻いて金色の瞳で薫を見つめる 縞模様の蛇 「この蛇は猛毒を持っています。噛まれたり少しでもかすったりしたら わずか数分で毒が回り死にますよ。・・・これを交わす事ができますか?」 うっすらと笑みを浮かべると同時に毒蛇は薫に襲い掛かった 蛇の牙が勢いよく薫に向かってくる 薫も竹刀を握り締め大きく振り上げた だが、蛇は薫の前を横切りものすごい速さで薫の背後へと回っていた 薫も蛇が背後にいることを知り、後ろを振り返る・・・・が、それは遅く 再び蛇の猛毒の牙が薫に降りかかる (しまった!) 「薫殿っ!」 志奥と剣を交えていた剣心は一瞬のすきをついて志奥の剣をなぎ払う すると逆刃刀を大きく振りかざし蛇へ向けて勢い良く投げ飛ばした それは見事に蛇の頭を貫き壊れかけた柱へと突きつけられた 「兄上!余計な事をしないで下さい!」 「言ったはずでござるよ、霞!薫殿に手を出すなと・・・」 「女の心配より自分の心配をしたらどうだ!」 後ろを振り返ると剣を振りかざす志奥が目の前にいた。 剣心も一度は避けたが次の攻撃に入るスピードが速すぎて 避ける事ができない。剣心は一瞬目を閉じた 「剣心、危ない!」 薫の声が聞こえる。だがそれはとても近くで そう思った時、剣心の体を何かが包んだ 覚えのあるこの香り 目を開くとそこには志奥に背を向け自分を抱きしめている薫がいた 「か、薫殿!」 「なにっ! 「志奥、剣をおろすなっ!」 志奥の剣は薫の体ギリギリのところで止まった 剣心は少し冷や汗を流していた 薫は剣心の胸に埋めていた顔をゆっくりあげ笑顔を向ける 「薫・・・殿・・・」 「・・・大丈夫?剣心。」 「薫さん・・・・・」 右から優しい女の人の声がした。それは聞き覚えのある声 二人して声の主のほうを向くと先ほどとは違う 穏やかな顔をしている霞の姿があった 「立てますか?」 「え、ええ・・・・」 薫は差し伸べられた手をつかみゆっくりと起き上がった 薫はいまだに状況を把握できていない そんな薫に志奥が話し掛けた 「良かったな。お前は神谷薫ではなく緋村薫として認められたんだ。」 「えっ・・・・・」 薫は驚いた顔つきで霞を見つめた それを見て霞は柔らかい笑顔を見せる 「すみません。実は兄上にふさわしいかじゃなくて、その・・・・ 兄上の事を本当に想っているかどうか知りたかったんです。口だけでは 何度でもいえるから。私はあなたに態度で示して欲しかったんです。本当に 兄上を想っているか・・・」 「そうだったの・・・」 「はい。・・・薫さん、あなたは本当に兄上を想って下さっているのですね。 さっき兄上を志奥からかばった時それが分かりました。相手を本当に想って いなきゃわざわざ危険を冒してまで助けに入ったりはしないもの・・・。」 「霞さん・・・・」 「薫さん、兄上をよろしくお願いします。・・・私のたった一人の大事な 兄上をあなたの手で幸せにしてあげてください・・・。兄上、良き人に 巡り会えましたね。二人の絆はとても強いわ。」 「・・・ああ、ありがとう。ところで霞、手紙の事何だが拙者はかまわない でござるよ。霞の決めた事でござる、拙者は何も言わない。」 その剣心の言葉を聞いた瞬間、霞の顔は見たことのない笑顔を見せた 「あ、ありがとうございます!兄上にそう言ってもらえて。志奥!」 喜びに満ち溢れた顔つきで志奥の方を振り返る 志奥もまたにっこりとまではいかないが優しい笑顔を霞に向けている 一体どういうことなのか薫には分からない でも一つだけ。志奥と霞はいま大きな幸せを手にしたと言う事 剣心の一言で・・・・ 「それでは兄上、薫さん。私達は行きます。薫さん、今度来る時は 朗報を期待してますよv」 「へ・・・・・・」 「おろ・・・・・」 「行くぞ、霞。・・・・っと、そこのあんた!」 「な、何よ・・・・」 志奥が後ろを振り向いた先にはまだ回復しない左之助と弥彦の看病をしている 恵がいた 「これを飲ませな。少しは痛みも和らぐだろうから。」 そう言ってボロボロの巾着を恵に投げてよこした 中には黒色の丸薬が入っている 恵はそれを半信半疑で弥彦、左之助にゆっくりと飲ませてやった 二人は顔をしかめ 「にがい・・・・」<二人 先ほどまで一言も話せなかったのにこの時ようやく二人は口を開いた 恵はずっと二人の看病をしていたから心から嬉しく思って 二人ではなくまず最初に左之助を強く抱きしめた その時の左之助の悲鳴は遠くの町にまで聞こえたと言う そんな中剣心と薫は二人肩を並べて神谷道場の門から去っていく 志奥、霞の姿を見送っていた。そんな二人を見ていて薫は恐る恐る 剣心に話し掛けた 「ねぇ、剣心。あの二人ってもしかしたら恋仲・・・だったのかな?」 「おろ、気づいていたでござるか?まさしく薫殿の言うとおりでござるよ。 といっても拙者はこの手紙がなかったら気づかなかったかもしれない でござる。」 剣心は懐の中から一枚の手紙を取り出した 封筒の中身を出し薫に見せる そこにはこう書かれてあった =拝啓、兄上、近々そちらの神谷道場に伺おうと思っております。兄上の 見つけた良き人をこの目で見ることと、あと兄上に会っていただきたい 人がいます。その人は私の大切な人。兄上から良き返事を聞けたらと思 います。 緋村霞 「これ・・・・・」 「霞の本当の目的。一つは手紙の内容とは少し違うけど薫殿に会いに、 もう一つは志奥を拙者に紹介したかった。志奥の強さは分かったし、 それに霞の選んだ男でござる。なんの心配もいらないでござるよ。 でもやはり、拙者の大事な妹でござるからそういう人ができて少し 悲しい気持ちがあるのは確かでござる。」 「じゃあ、手紙もらって沈んでたのは・・・・そのせい?」 「はは・・・・拙者もまだまだでござるな。」 「・・・・ううん。いい事だよ、剣心。だってそう思うのは霞さんを 大事に思ってるからでしょ?霞さんや私だって。大事な人にそう思わ れてるってなんか嬉しい気持ちにならない?」 「・・・そうでござるね。・・・ありがとう、拙者、薫殿を選んで 大正解でござるよ。」 「私も。剣心でよかったv」 半年後、薫に剣心との子供ができたとの朗報を聞き、久々に志奥と霞が 神谷道場に訪れた。剣心と薫の強い絆でできたその子供は、後に 「緋村剣路」として誕生する
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おおぅ、こうきましたか! 皆様お待たせいたしましたッ!!!! 長い間管理人のところで眠っていたこの優月さんの 小説、本日解禁にございます。 戦闘シーン迫力ありますね。 剣心が蛇に襲われそうな薫殿を助ける シーン、そして薫が剣心を守るシーンなど、 目に浮かぶような描写、すってきです。 それにそれにッ。 なんだぁ霞ちゃんったら…可愛いじゃないですか!(笑) 薫ちゃんの剣心を思う気持ちが 上辺だけじゃないって、照明された瞬間でしたね。 霞も志奥も、とても魅力的なキャラクターでしたねぇ(>▽<) 誰かお絵かき掲示板にか・い・てv(色仕掛け?) 素敵な小説有難うございましたぁv 2004.12.22 up |