あいのみちしるべ

あいのみちしるべ

 

木漏れ日。

寒い冬を越え、温かい光が神谷道場の縁側を照らしている。

 

そこには、小さな二人の影。

薫は剣路を寝かしつけ

二人でのんびりのんびりとお茶を飲んでいる所だった。

ほわほわとのぼってくる湯気が心地いい。

 

「薫。」

 

「なぁに?剣心…。」

 

「お茶が上手いでござるな。」

 

「ふふ、そうねぇ。」

 

かくも、平穏な日常。

お茶を飲んで一息ついた私は

とろーんと、眠そうなあなたの顔に気がついた。

 

「剣心、眠いの?」

 

「…おろ。」

いつもの口癖であなたは笑った。

 

――木もれ陽に笑うあなたその胸に愛を重ね

どこまでも続く道を寄りそって生きよう

 

「お昼寝、する?」

私はからかうように、自分の膝をぽんとたたいて

こう言った。

 

「…剣路じゃあるまいし…。」

 

遠慮がちなあなたの顔。遠慮なんていらないのに…。

そう、いつも私の膝は息子の剣路の居場所。

でも、今あの子は眠っているから。

私の特別な場所、あなたにも…。

 

「剣心の場所でも、あるのよ」

 

にこり、彼に向かってそう微笑んで。

もう一度横になるように彼に促した。

 

「…それでは。」

 

はにかんだような顔で

少年のように目配せをして。

あなたはゆっくりと私の膝に体重を預けてくれる。

 

――若さという名のふしぎな時に別れ告げても

  変らずに夢を求め歩いて下さい

 

さらさらと流れるあなたの赤い髪に

すぅと指をくぐらせる。

 

「薫…くすぐったいでござるよ」

 

「えぇ?」

 

最近はわたしも剣路につきっきりで

なかなか二人になれる時間がなかった。

そんな時間を埋めるかのように

優しく、そしてゆっくりと

私とあなたの時間が過ぎていく。

 

――この髪に指をからませやさしいほほえみで

  教えてね この世には変らぬ愛があること

 

「剣心。」

 

「ん…。」

 

あなたは瞼を閉じて。

深い深い眠りに入る。

安心しきった少年のような顔で、

私の手を軽く握りながら。

温かい、あなたの手と私の手が優しく重なっていく。

 

――たとえ悲しみにこの胸 はりさける時も

  そばにいて あなたの愛で包んで下さい

 

その少し大きな手をぎゅっと握り返して。

もう二度と失いたくはない、そして失わないと

約束したあなたの髪にまたすらりと指を遊ばせた。

 

「おやすみ、薫…。」

 

 

――すべてのよろこびすべての悩み 分かち合って

  よりそって生きて行きたい一度だけの人生

 

「おやすみなさい、剣心…。」

 

そう言ってすぅと寝息を立てるあなたの

髪を撫でながら、迎える今日の午後。

 

これからもずっとこんな日常と

幸せなあなたがいますように。

 

笑顔の私がいますように。

家族三人、穏やかに過ごすことができますように…。

 

また変わらぬ日常が続きますように…。

 

 

あなたの罪をともに背負って

よりそって…共に生きよう。

 

 

「おやすみ…」

 

わたしはひとつ、ため息をついた。

そう、それは幸せのため息。

もう一度あなたに声をかけ

ふと縁側から空を見上げる。

その空は、青く青く、どこまでも透き通っていた。                 END

はぁぃ。いつもどおりラブラブ甘々小説でしたv剣心のセリフ少ない!(笑)この小説のモチーフとなったのは今話題の森山良子さんの「愛の道標」という曲です。歌詞しか見ていないのですがとても優しくて温かな曲です。

このあとしばらくして剣路君が起きてきて剣心は薫殿のお膝から退去しなければいけなくなった…なんてのは

また、別のお話です(ひどい)もしよろしかったら、感想はBBSにてお待ちしておりますv 2002.1.12 up!

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