*…風花…*mikuさんより。 |
風花―dedicated to Misaki― 今日の景色は 少しだけ特別。 いつもの仕事の帰り道、甘味処にはかき氷。 まだ少し道は長いし、たまにはいいかな と思って店先で注文して。 腰掛けた席は桜の木が夕陽を包んでくれている。 ― 少し焼けた? 毎日歩き回っているし。 夏の終わりの空気は橙色で 少し淋しくて優しい。 目の前の桜の木は春には美しく花を咲かせて 見る人の心を溶かしてくれるだろう。 お店の女の子が持ってきてくれたかき氷は冷たくて気持ちいい。 涼しい風が通り抜けていく。 ― よぅ。 聞き慣れた声に振り向いて、確認。 日焼けしていても相変わらずの格好で。 季節感っていうものはこの人にはないらしい。 私の横に座って、私の手から匙を取って 多分やるだろうと思ったけど勝手にかき氷を一口。 ― 恵にかき氷って似合わねぇな。 ― 人のこと言えるの? 匙を奪い返して私もまた一口。 あの桜の木が花びらで満たされる景色が、なぜか鮮明に思い浮かぶ。 ― ねぇ。 すぐ隣の、今一番近くにいる人と ― 春になったら桜、見に来ない? なぜか約束事をしたくなった。 案の定相手は少し驚いた顔で、次に笑って ― 季節外れな奴。 と一言。 ― 左之には言われたくないわ。 いつからかこんな風に、言葉とは別に ふわりと笑えるようになった。 ― 半年も先の話かよ。 私と同じように夕陽を眩しそうに見て。 枝いっぱい緑に埋まった木に近づいて、葉を一枚摘み取った。 ― いいじゃない。 好きなんだから。 ― 桜が、よ。 自分で自分の言葉に慌ててしまって、何だか赤くなってしまいそうで またかき氷を一口食べた。 ― わかってますとも、高荷先生。 奴はおどけた口調でまた歩み寄って来て、さっきの葉がかき氷に載せられた。 ― 言い出した方が忘れんなよ。 私の額の辺りで響いた声に そっちこそ、と返そうとして見上げた瞬間に。 不意打ちの、ひんやりした口づけ。 ― じゃな。 私が文句を言うよりも早く、あいつはさっさと歩いて行ってしまって。 私は誰に見られてるわけでもないのに自分の頬に触れる。 冷たい器を持っていたせいで、ひんやりした手が気持ちいい。 でも、まだきっと顔は赤いんだろうと思う。 きれいな夕陽も 照らされた街並みも 目の前の桜も すべての人に平等に美しく映る。 だけど今日の景色は ほんの少しだけ特別。 ---終--- |
うぉーん(嬉泣)ごごご、ごめんなさい、いきなり泣いてごめんなさい(笑) Mikuさんより頂きました! 美咲の誕生日にあわせて…ということで、小説をプレゼントしてくださいました。 これは嬉し泣きするしかないですよぉ。。。。。。 有難うございマス!! 相変わらずステキな左之助×恵小説でした。 原作の雰囲気が伝わってきますv 本当に有難うございます! それ以上の言葉はありません。 Mikuさんの小説は他にもありますので、ぜひ読んでみてくださいねv mikuさんは小説投稿フォームでご投稿くださいました! 2004.9.7 up |