*…背中…*natsunaさまThank you★ |
背中 その日剣心は1人京都の山の中にいた。 向かう先は、比古清十郎の元である。 訪ねるのは何年ぶりだろう……そう思う。 京都でのあの志々雄との決戦のさい訪れた以来だったりする。 今日の目的は、べつにただ会いにきたわけではない。 「剣路はどこですか。薫殿が心配していて……」 剣心はずっとあちこちに出かけて戦う事または、人々を助けたりしていた。 まず、家にいる方が少なかったが、剣路も1人でここ比古清十郎のもとに来ていた。 話もろくにしないので、何をやっているかはわからない。 何年かぶりの再会だが、何もかわっていないこの風景、そして師匠の姿。 何も言わなくてもこの人にはすべてお見通しなのかと思わせる。あの時京都に来たときも……そう思った。 「……今日はこのくらいにするか……。そろそろ東京に帰るか。母さんも心配するだろうし……」 そう言って歩を進めると2人の話し声で、その歩みを止めてその場にとどまった。 (親父の声? なんでここに来たんだ?) 「……剣路はどうですか? とは言ってもまだ御剣流は教えてないでしょう?」 「……そうですか」 そんなやりとりをしていても、2人は顔をあわせていない。比古はずっと剣心に背中をむけたままだ。 「それじゃ……。俺はこれで……」 ただそれだけ言葉を返して、その場を去った。剣心の姿が見えなくなってから剣路が姿を見せた。 「……親父が来たんですか……?」 そこは小さな墓が並んでいるところだ。剣心が初めて比古とあった場所。
離れた場所から剣心の後姿を見つめている。 ここの場所についてはもちろん何も聴いてはいない。 あまり過去の話は聞いていないからだ。 ただ知っているのは、人斬りの事、巴の死についてだ。 それにしても薫から聞いただけで、剣心本人からでない。 「剣路か?」 振り向かない剣心はそのままで話しかけてきた。 「……母さんにでも言われて来たんだろ?」 その場を去ろうとして剣路が一歩踏み出した時剣心が声をかけた。振り向くと剣心がこちらを向いている。 「どんなに強い人でも最初から強いものではない。積み重ねがあってこそだ。どんな事でもな……」 はき捨てる様に言うとその場を後にする。今度は剣路が背中を向ける。それでも剣心の視線を感じた。 「……あんまり母さんを心配させんな……」 つぶやくように言ったが、果たして剣心に聞こえたかどうかはわからない。 |
■natsunaさんのコメント■ これにかんしてはなかなかいい感じにできたと思います。これは星霜編の内容に衝撃をうけて考えたもの。剣路が1人京都に来てましたもの(家出なのかな?)。ラストで涙でしたね。剣心と比古の話は前から書いてみたくて、この話では比古と剣心をメインにと思って書いたものです。 ■美咲から■ natsunaさん、小説投稿有難うございました!風花庵にはないタイプのお話でした。とっても深いお話ですから、何度も、何度も読み直してしまいました★星霜編は衝撃でしたね、色々な意味で…。 比古さま、風花庵初登場でした(笑)それでは、素敵な小説有難うございました! 2004.2.3 up! |