*…お題お月見に挑戦!…*by眠気覚ましサン

お月見

 

「蒼紫さまぁ」
  「なんだ」
  「お月見しませんか?」
  
  操がそんなことを言ったのは、月の綺麗な夜だった。
  その夜は葵屋メンバー勢揃いでにぎやかにお月見をしたあとだった。
  「さっきしたばかりだろう」
  蒼紫が少々あきれた口調で言う。
  「いいじゃないですか2回したって。今度は静かに月を見るだけのお月見で
  すよ。」
  操はどうやらすねているようだ。
  「・・・・・別に構わん。」
  「ホントですか!?」
  操はとても嬉しそうで、今にも飛び跳ねそうな勢いだった。
  「じゃあ、あたしさっきのお団子の残り持ってきます!こっそりとっちゃえ
  ばバレませんよね?」
  「ほどほどにしておけよ」
  「はぁい!」と言うと、操は廊下を駆け抜けていった。
  どこがこっそりなんだか、と蒼紫は一瞬あきれたが、先に縁側に座って操を
  待つことにした。
  
  少しすると、操が廊下の向こうから戻ってきた。
  「はい、これ蒼紫様の分です。」
  といいながら、操は団子を1つ手渡した。少しだけ指先が触れたが、蒼紫は
  気づいていないようだった。
  「操」
  「なんですか?」
  「お前は二つも食べる気か?」
  操の手には、団子が二つしっかりと握られていた。
  「あ・・・・・・、ま、まあいいじゃないですか!」
  操は少々恥ずかしそうだ。
  「まあお前がいいなら構わんが」
  そう言って、蒼紫が団子を口にしたので、操も食べることにした。
  「蒼紫様、おいしいですか?」
  「お前が作ったのか?」
  蒼紫が質問を返した。
  「あ、まあそうなんですけど・・・・・・・。で、おいしいですか?」
  「うまい」
  「ホントですか!?」
  「ああ、お前が作ったにしてはな。」
  「よかった・・・・・。ん?でも『お前がつくったにしては』っ
  て・・・・?ま、いっか。」
  操は気にせず団子を食べ続けることにした。パクリ、パクリと口の中にほお
  りこんでいく。
  蒼紫はそれをチラリと見たのだが、操は気がつかなかった。
  (静かに月見、か・・・・・)
  操は黙って月を見ながら団子を食べ続けている。
  (確かに食べているときは静かだな・・・)
  蒼紫は小さく笑ったが、操はそれも気がつかなかったようである。
  
  「蒼紫様」
  「なんだ」
  「月にはウサギがいるって言うじゃないですか」
  「言うな」
  「あれって誰が考えたんでしょうね。あたしにはどう頑張ってもウサギなん
  か見えないんですよ」
  「さあな、俺にも見えんが」
  「ですよね」
  会話が終わってしまった。操はなんとかして話題を探そうとしているよう
  だ。
  「蒼紫様」
  「なんだ」
  「緋村や薫さん元気にしてるかな」
  「さあな。特に大きな異変もないようだし、平和にやっているんじゃない
  か」
  「そっか」
  どうしても会話が続かない。
  「蒼紫様」
  「操」
  操は思わずビクっとしてしまった。
  「なんですか?」
  「『静かに月見』じゃなかったのか?」
  「・・・・・・はい。」
  操は少々しょんぼりしたようだった。せっかく蒼紫様と2人きりになれたの
  に。
  それからしばらくは長い沈黙が続いた。
  
  ふいに、操が蒼紫の肩に寄り添ってきた。
  「操?」
  蒼紫が話しかけても返事が無い。顔を覗き込むと、どうやら寝てしまったよ
  うだ。やはり静かなのは操の性に合わないようである。
  蒼紫がここから動けば操を起こしてしまうことになる。しょうがないので蒼
  紫は一人お月見を続けることにした。もともと一人で静かにしているのは嫌
  いではなかった。
  (しかし)
  今夜の月は本当に綺麗だ、と蒼紫は思った。その美しさに思わず見入ってし
  まいそうだった。
  
  記憶が途切れたのはいつからだったろうか。目が覚めたのは、もう大分夜中
  をまわってからだった。どうやら寝てしまったらしい。
  (俺が居眠りとは、珍しいこともあるな)
  蒼紫はあることに気がついた。
  操がいない。
  部屋に戻ったのかと思い、操の部屋へ向かった。
  「操、起きているか」
  返事が無い。おかしい、と思い、蒼紫は今度は自分の部屋へ向かった。
  今度は何も言わずにふすまを開けた。すると、蒼紫の布団で操が気持ちよさ
  そうに眠っていた。
  「しかたのないやつだな・・・。」
  蒼紫は思わずつぶやいた。
  操は、起こすのが気の毒になりそうなほどぐっすりと眠っていた。
  蒼紫が操のすぐ横に座り、操の頬に触れた。
  操はそんなことは知らないかのように眠り続けている。その表情は笑顔だっ
  た。
  蒼紫は今度は頭を撫でてやった。
  操は寝返りを打ったが、起きる様子は無い。
  蒼紫は操を起こしたくなかった。しょうがないので、その日は蒼紫が操の部
  屋で眠ることにした。
  
  
  (蒼紫様ったら、ああ見えて意外と単純なんだから。まあそこがまたいいん
  だけどね。)
  (けどたまにはちょっと位甘えたってバチはあたんないよね)
  
  本当は、操は眠ってはいなかった。
  縁側で月見をしながら蒼紫に寄りかかったときも、操は息をできるだけ潜め
  て眠ったふりをしていただけだった。
  (でもさすがに蒼紫様がうっかり寝ちゃったのにはビックリしたなぁ。それ
  だけあたしに心をゆるしてるってことなのかな)
  そう思うと、なんだか嬉しくなってきた。今夜はいい夢が見れそうだ。
  (でも、本当のこと言ったらちょっとは怒るよなぁ。やっぱ黙っとこ)
  その夜操はとても幸せな夢を見た。
  内容はよく覚えていなかったけど、二つだけしっかりと頭に焼き付いている
  ことがあった。
  その夢は、とても暖かく、幸せな夢だったということ。そして、蒼紫がでて
  きたということ。
  
  そう、この夜に操が起きていたのは、あたしだけの内緒の話。
  あたしのささやかな幸せとして、胸の中にしまっておこう。
  
  次の日。
  蒼紫は一日中、くしゃみと鼻水が止まらなかったとか。
  

 

イラストでもお馴染みの眠気覚ましさんに頂きましたvv

有難うございました〜!

 

操ちゃん寝たフリだったんですね〜v

蒼紫がうたたねしちゃうとはいませんよね。

それだけ操には心を許しているんでしょうv

 

読んでいる側がとてもほんわかとした幸せな気持ちに

なりますよね(>▽<)★

 

次の日蒼紫さんちゃっかり風邪ひいちゃっているとこが

可愛いですね(笑)

 

眠気覚ましさん、素敵な作品有難うございましたぁv

 

2004.12.11

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