*思い出

  思い出

 

                 −どこにいるの?

            この頃、よく思うの。

           逢いたいな。みんなに……

                   

 

 私、神谷 薫はもう高3です。

  大学へ行くため勉強してます。

  「薫さ〜〜ん!」

     

一つ下の剣道部の後輩・操が駆けてきた。

 

「調子はどう?」

   彼女とは前から私とよく気があい高校へ入ってからよく話すようになった。

     そして今も大学受験の勉強の様子を見に図書室へ来てくれる。

 

「まあまあ……ね。」

「あっ!今日の左之助に逢いましたよ〜!!」

「ちょっ…!操ちゃんったら一応、左之助は先輩だから呼び捨てはどうかと…」

「いいの、いいの!!アイツだって私のこと呼び捨てだもん!それにいつも

  散々な呼び方だったし……」

 

「で?様子はどうだった?」 

「アイツったら、黒髪でロングヘアーの美人な彼女が一緒だったんですよ〜それに年上!!」

     

 

驚きのあまりシャーペンの芯が折れてしまった。

 

「あ・・・あの左之助が!?」 

「うん。恵って言ってたような……」

「そ……それって高荷 恵!?」

「た……たぶん……。」

「彼女は有名な医者の娘で、今すごく注目されてるのよ!!」

「あの先輩がそんな彼女を……」

「それ左之助が聞いてたらまた憎まれ口たたかれるわよ。」

     

 

―はあ。そういえばあの人にあってないなぁ……

 

「あいたいなぁ〜……」

「へ?左之助に!?」

「違う違う!!」

「ねぇ〜!薫さんはどうして彼氏つくらないの?」

     

 

 

―そうきたか。

 

 「えへへへ……。操ちゃんは四乃森先輩とどうなの?」

  「この間久しぶりに蒼紫様に稽古つけてもらいました!」

  「未だに「様」で呼んでるの。まあ、よかったじゃない!あんまり逢わないんでしょ?」

  「はい!だからすごくうれしかったです!!」

     ―彼はまだ大学にいるのだろうか……?

  「か……薫さん?どうしたの?ボーっとして?」

  「ん?なんでもない。」

  「このごろ勉強しすぎて寝てないんじゃない?」

  「そんなことはないわよ。ちゃんと3時間寝たし……」

  「さ……3時間!ダメだよ!ちゃんと寝なきゃ!!」

  「でも、剣道の方もちゃんとやんなきゃダメだし……」

  「でもダメ!寝なきゃダメ〜〜!!今日は早く帰ったほうがいいって!」

  「は〜い。」

―しょうがない。この子のいう通り帰ろう。

  帰る支度をして学校を出た。

    

 

―逢いたいな……。

 

                 *

 

 

 

  電車にゆられ学校から2駅となりのところにある自宅へ向かった。

  私の家・神谷道場は『人を守る剣』を教えている。

  でも、両親はいない。

  親戚のおじさんに育ててもらっている。

 

「ただいま〜」

  玄関にはいってもやはり声は帰ってこない。はずだが……

 

「おかえりぃ。」

  聞き覚えのある声。

  薫はもしやという気持ちで背中を押され、居間へ向かった。

 

「よお。薫。久しぶりだな!」

 

  少年はニイッと笑った。

 

 「弥彦ぉ〜〜!?」

 

  少年は、薫の近所の年下の子で、剣道の教え子でもある、明神弥彦だ。

 

 「な…なんであんたがいるのよ!?稽古はできないって…」

  「そのことでここに剣心がいないかなぁ〜っと…」

  「あ…あの人がいるわけないでしょ!?」

  「そりゃそうだな!」

  「で、どこから入ってきたのよ?」

  「ん?道場の端のとこから!鍵かかかってなくてサァ〜♪」

 

  弥彦はニッコリ笑ったが薫はもうカンカンだった。

 

  「やぁーーーーひぃーーーーーこぉーーーーーーーー!!!!」

 

さすが、剣術小町といわれるだけあって口だけではなく、手まで動き始めた。

 

「勝手に人の家に上がってなんなの?その言い草わぁ〜〜〜!?」

 

 右手に持っていたバッグを振り回し怒りを弥彦にぶつけた。

 

「お〜っと……!」

 

 久しぶりだという顔をして、はしに置いておいた竹刀を持って薫へと向かった。

 

「へ〜。なかなか腕を上げたわね!弥彦!」

「へへへ〜〜!そうだろぉ〜?」

「でもあまい!!」

 

その声で弥彦はバックに注目したがもう遅かった。

 

「すきありっ!」

 

 スパンッという鋭い音と共に弥彦は尻餅をついた。

 

「ててて……少しは手加減しろよ!」

「あなたも剣道やってるんでしょ?」

「剣道じゃねぇ!剣術だ!術!!」

「はいはい。で弥彦は夕ご飯食べた?」

「まだ、食ってねえ。薫待ってたから。」

「じゃあ、簡単に何か作るよ。ちょっと待ってて」

「待った!俺も手伝う!お前の飯はなんともいえねえいえねえからなぁ」

 

また薫がきれかけたが珍しく「手伝う」といったのでなんとか爆発しなかった。

 

「いただきます。」

「おっ!少しは料理うまくなったじゃねえか!」

「ふん!あんたに言われたくないわ。」

「なんだよ。せっかく剣心の手紙届けに来たってのに」

「えっ!?手紙!?」

「この間俺ンとこに手紙が届いたんだよ。ほい。お前の。」

「わ……私?」

「そ。お前の。読んでみろよ。」

 いわれなくても読むわよ!」

 

 弥彦から渡された手紙をやや緊張しながらひろげた。

 

「えっと…薫へお久しぶりです。

  みんなは元気にしていますか?道場はどうですか?

  みんなで楽しく過ごしていたあの時が懐かしい。

  俺は今T大学の大学院生になり、剣術のサークルにはいっています。

  薫は今年で高3だよね。

  もしよかったら来年T大学へ来ないかい?

  いい返事を期待しています。」

 

―そうだ。今一番逢いたい人はこの緋村剣心だ。

 

  そして薫は追記の部分を読んだ瞬間、目を見開いた。

  「 追記 近々また道場へ顔を出します。そのときはまた連絡します。

   では、お元気で。」

  「やった〜!!またあの剣心がくるっ!!!」

 

 弥彦は飛び上がった。

 

「やった〜!やった〜!か…薫っ!?」

  弥彦の表情がいきなり変わった。

  「お・・・おい、薫っ!どうしたんだよっ!?」

  弥彦の見た薫は。

  泣いていた。

  静かに涙をぽろぽろとこぼしていた。

 

  「ご…ごめんね。剣心が帰ってくるって思っても見なかったから…。」

  「んだよ。薫っ!お前がしっかり待ってないと剣心が心配すっぞっ!」

  「へへ…。そうよね。しっかり待ってなきゃね…。」

 

薫は袖で涙をぬぐうが目からまたぽたりと涙をこぼした。

弥彦は思わず言ってしまった。

 

「薫が泣くなんて性に合わないぞ!」

「ふふ。そうね…。元気ださなくちゃ。」

 

―弥彦。本当によく育ったわ。前に弥彦が私の弟って勘違いされたことがあったっけ?

   ふふふ。本当にそうだったらよかったのになぁ。

 

「へへへへ…。」

「なんだよ。気持ち悪い…。」

「弥彦ぉ〜〜!!!!」

 

 弥彦を捕まえた薫は手を持ち上げた。

        ペチンッ!

「い…・痛くない!?」

「へへへ。あんたもよくいうようになったわ。誰に似たのかしらね?」

「知らねぇーよ。」

「そうよね。」

 

 2人はいつの間にか笑っていた。 こうしてにぎやかな夜は過ぎていった。

 

 

                      *

 

  小鳥のさえずりと目覚まし時計のアラームが同時に薫の耳へ入ってきた。

 

「ふぁあ。もう朝?」

 

 昨日は、あのあと弥彦は薫の家へとまっていったのだ。

そしていつもよりすこしはやめに寝た薫だった。

その薫が時計を見るなり飛び上がった。

 

「うそっ!もうこんな時間っ!」

 

  急いで制服に着替え居間へと向かった。

 

  「おはよぉ〜弥彦ぉ〜。ん?」

 

  襖を開けてみるとそこには弥彦はいないが朝食と手紙が置かれてあった。

  「なにこれ…」

 

  薫へ

  起きたか?

  もう朝練の時間だから行ってくるわ。

  今日はちゃんと家へ戻るから心配すんなよ!

  じゃあな。

               

 弥彦      

 

薫はその手紙を閉じるなり呟いた。

 

  「馬鹿。弟子を心配しない師匠なんてどこにいるのよ。」

 

  口でそんなことを薫は言ったが顔は笑顔であふれていた。

 

  「よし。弥彦が作った朝食でも食べちゃうか。いただきます。」

 

 

*10分後*

 

「ごちそうさまでした。よし。でかける準備をしちゃうかぁ。」

 

  部屋に自分のバックを取りに行きでかける前の身だしなみチェックをした。

  ふと時計を見て薫は飛び上がった。

 

  「うっそっ!もうこんな時間っ!急がなきゃっ!」

 

  薫は家の鍵を閉め駅へ走って行った。

 

   『ドアが閉まります。ご注意ください』

 

「ああっ!待ってぇ〜〜!」

 

  薫は駆け込み乗車をした。

  プシュゥ…

  薫は危機一髪で電車に乗り込めたのだった。

 

「間に合った…。」

 

  薫はほっと胸を撫で下ろした。

  そして、操を探し始めた。

  操はこの電車に乗っているはずだ。

  どこにいるのだろう?

  「あっ!いたっ!…あ…。」

  操の隣には操が思っている四乃森蒼紫がいた。

  2人は親戚で操は青紫に憧れている。

  そんな2人が今、すごくいい雰囲気が漂っている。

  薫は声をかけずにちょっと離れたところで2人を見守っていた。

 

―あ〜あ。羨ましいなっ…。私もあんな時ってあったのかな?

 

ひとつため息をつきまた2人をこっそりと見ていた。

電車が止まった。

そしてドアが開き、蒼紫は降りていった。

操はそれを笑顔で送っていった。でもどこかしら切なげに見えた。

 

─操ちゃん…。

 

薫はまだひそかに見ていたが操が視線の強さで気づいてしまった。

 

「かっ…薫さん!!」

ほんのり顔を赤くして呟いた。

 

「操ちゃん!四乃森先輩といい感じだったじゃない!」

「そ…そうだった?」

「うんうん。あ!操ちゃんにこれっ!」

 

  昨日弥彦から預かった操と蒼紫宛の剣心からの手紙を渡した。

 

  「緋村…?えっ…?緋村ぁ〜!?」

  「ほらっ。静かにっ!!」

 

操は目を見開いて叫びたそうな顔をして押しこらえた。

 

  「弥彦が剣心から預かった手紙なの。」

  「へぇ〜。緋村が。めずらしぃ〜」

  「でね?それが…」

  昨日薫宛に書かれていた手紙の内容を話した。

  「神谷道場に来るのっ!?よかったじゃん!」

  「へへへへ…v」

 

しまりのない顔で薫は笑った。

 

  「そっかぁ〜…。緋村が。じゃあその時は呼んでよ!みんなで行くから!」

  「はいはい。」

  2人はクスクスと笑った。

  そんなことをしていると電車は止まり薫と操は電車から降りていった。

 

          *放課後*

 

今日もまた図書室で勉強を始めた。

今回は珍しく小型ラジオを持ってきて聞いていた。

ラジオにメールを出したのだ。

それが流れるのを待ちながら勉強をしていた。

 

『…よかったですねぇ〜。

  続いては「剣術小町」さんからです。』

 

―あっ。きたきた!

 

 『私は受験生で今大学受験に向けて勉強しています。

  そんな私にある一通の手紙が昨日届きました。

  片思いをしている彼からです。

  彼は近頃あってません。

  年上の彼は大学生でサークルでがんばっているそうです。

  そんな彼からまた逢いにいくとの連絡の手紙でした。

  うれしくてうれしくてたまりませんでした。と送ってくれしました。

  いいですねぇ〜!青春ですねぇ〜!

  受験がんばってくださいね!では次は…』

 

─剣心聞いてるかな?聞いてたらいいなぁ〜…。

 

薫はラジオの電源を切って、早めに家へ帰った。

 

『えっと、ラジオネーム「十字傷」さんからです。

  さっきのメッセージで「剣術小町」さんのメッセージを聞いて送るらさせて

  いただきました。実は私も先日ある人に手紙を送りました。やはり私も片思

  いの子です。彼女は高校生で受験に励んでいます。

  私のことを覚えているでしょうか…。とメッセージが届いています。

  ええ!絶対覚えていますとも!

  みなさん素敵な生活を送っていますねぇ〜!では次のメッセージは…』

 

             ─どこにいるの?

             この頃、よく思うの。

         そんな時でもみんなの気持ちは一つだから。

            あの時は永遠に消えないから。

 

 

 

  

 

本当は四周年記念としていただいたのですが

時間の都合で掲載できずに

今回の掲載となりました。

オールキャラの現代版でした。

キャラ設定もしっかりとしていて♪

私も薫ちゃんの通う高校に行きたくなりました(笑)

なんと、この小説の作者さんは小6だそうで。

次で中学生かな?

美咲がwhat's the matter?を書いていた頃の

年齢です(笑)

 

衣瑠香さん、有難うございました♪

 

20040210

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