*…好き・すき…*

好き・すき

 

「おーい。燕、終わったか?帰るぞ」
「あっ……うん。弥彦君」
 
 
東京人気牛鍋屋『赤べこ』
この日もやっぱり大忙しで、2人は夜遅くまで働いた。
2人とも、端から見れば恋人のようで…
それでも何だか違うようで…
 
 
「わぁ…弥彦君見て。蛍…」
 
 
帰り道。
いつもと同じ帰り道。
でも1人でいる時とは全然違う。
2人の時は帰りたくない。
 
「おぉ…確かにキレイだなぁ。ちょっと寄ってくか?」
「……うん!」
 
2人とも寄り添うように座る。
周りを蛍が飛びまわる。
ぽぅ……ぽぅ……と……。
 
「…夏だよなぁ……この前まで、寒かったのに…」
「そうだよね。つい前まで、この道も違かったのに…」
「はぁ?この道が?いつもと同じじゃねぇか?」
「ううん。違うよ。弥彦君いつも見てたのに、気づかなかったの?」
 
…それは、燕を見ていたわけで……
でも言えるわけもないので、そうだったかなぁ?とごまかす。
 
「春にはね、桜がいっぱい咲いて、蒲公英も咲くの。
去年の夏には、蝉がずーっと鳴いてて、弥彦君、怒ってた。」
「ああ!!ずーっと鳴いてて鳴きやまねえから、取って剣路にやったんだ。」
 
ようやく思い出した弥彦を見て、燕は笑う。
 
「……なんで笑うんだよ…////」
「だって、弥彦君、秋には落ち葉が邪魔だって言って、
道場に全部拾ってばらまいたんだもん」
 
「そうそう、あん時の薫はそりゃ怖えぇのなんのって…」
 
くすくすと笑う燕は可愛い。
小さな華みたいで
そっと包みたくなるような華で
守りたい
 
 
弥彦は笑う燕を見て優しく微笑むと、燕を引き寄せた。
そっと、コワレモノを扱うみたいに…
燕は顔を真っ赤にするが、抵抗をするわけでもなく、
弥彦に安心して寄り添う。
 
 
「…俺、お前の事誰よりも大切だぞ。本当だからな。」
 
燕は顔を上げてびっくりするが、
たぶん弥彦が今までに見た事のないぐらいの笑顔で笑う。
やわらかい風が吹く。
 
 
「…私ね…弥彦君と居るとあったかいの。ずっと一緒にいたい…」
「燕…」
「私…弥彦君の事ずっと…ずっと…」
「好きだ。」
「…すき…」
「俺も燕が好きだ!ずっと、誰よりも好きだ!」
/////…私もあなたが好き……」
「じゃあ、俺達ずっと一緒だな!」
「うん!」
 
 
多分あの日出会わなくても
きっと2人は出会うんです
そういう運命なんです
ずっと ずっと前からの小さなちいさな運命なんです
 
 
 
『弥彦君!今日からウチで働く事になった燕ちゃんや』
『…は…はじめまして。宜しくお願いします。』
『…よろしく…』
 
 
(怖いよう…なんか…)
(なんだコイツ。ビクビクしてんなぁ…)
(でも…)
(でも、なんか…)
 
 
(…初めて会った気がしないなぁ…)
 
 
 

 

                               END

小川葉址さんより頂きました^^幸せいっぱいの弥彦v燕小説でした〜☆読んでいるこっちが本当に幸せになってしまうような、運命的な素敵な小説ですvv多分あの日出会わなくても…のあとの四行、いいですよね…特に!そうなんですよ!二人は必然に出会ったvんですよね!!感想はbbsなどで^^2002.4.28up

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