*…月夜の下で…* |
「月夜の下で」 雪代縁との激しい戦いが終わり、神谷道場に帰ってきた剣心達。 その宴とも言うような祭りが町で行われようとしている。 提灯には明かりが灯り沢山の屋台がでて、 あちこち大勢の人たちでにぎわっている。 一方、神谷道場では・・・・・ 「薫殿ー、まだでござるかー?」 「んー、待ってもうちょっと。」 そこには身支度を済ませた剣心と髪を結いながら バタバタと走ってくる薫の姿があった。 そしてその後ろには楽しそうに話をしている弥彦と燕がいた。 「全く、薫はいつもこうなんだよなー。肝心なときにバタバタしてさ。」 「うるさいわね。女の身支度にはいろいろと時間がかかるのよ!」 「じゃあ、燕はどうなんだよ!薫より早いぞ!」 「ぐっ・・・・・つ、燕ちゃんは特別よ!」 「なんだよ、それ!」 「まぁま、二人ともお祭りに行く前からそんなに騒ぐとお祭りを楽しめなくなるでござる。」 「だって、剣心。」(二人) 「そんなことより、弥彦。さっきから燕殿がずっと待っているでござるよ?」 剣心が指を刺したとこには、一人でぽつんと立っている燕がいた。 弥彦は薫との言い合いで燕の事をすっかり忘れていたのだ。 「あ、わ、悪い燕!」
「ううん、いいよ、別に・・・・。」
「薫がいちいちうるさいからだぞ!」
「なんですってぇー!」
「わー、弥、弥彦!早く行くでござるー!」
「えっ、ああ。ほら行くぞ、燕!へーんだ薫の鬼ー!」 「弥ぁ彦ぉぉぉぉぉぉぉ!」
形相を変えて怒る薫をよそに弥彦は笑いながら 燕の手を取りにぎやかな祭りへと走った。 「全く!いつまでたっても子供なんだから!」
「薫殿もあまりかわらないのでは・・・・・・!」
「ちょっと剣心!今の聞き捨てならないんだけど!」
「あっ・・・・・・!」 つい口がすべり、剣心は慌てて口をふさいだ。 目の前には恐ろしい顔をして剣心を 睨む薫の姿があった。 「あははは・・・さ、さぁ行くでござるよ、薫殿。」
「えっ・・・ね、ねぇ剣心。お祭りはあっちよ?そっちはちがう・・・。」 「こっちでいいでござる。」
にこやかに笑いながら薫の手をとり祭りとは反対の方向に進んでいった。 「ねぇ、ねぇってば。どこいくの、剣心?」
黙々と歩いておよそ一時間、辺りは木々で囲まれ、地面は草木で生い茂っている。 道はだんだんと細くなり険しくなっていく。すると今まで一言もしゃべらず歩いて いた剣心が立ち止まり振り向くと薫の耳元でかすれるような声でささやいた。
「もうすこしでござる。」
そう言うと再び歩き出した。薫はわけがわからないまま剣心に手を引かれていっ た。それから数十分後、剣心と薫の前に長い階段が現れた。 「ここを登ったら着くでござるよ。」
ええ!ここを登るのー!」 1時間以上歩かされ休まずここまで来た薫はすでに疲れきっていた。 それでも剣心は薫の手をひっぱり階段を登っていった。どうしてこんなに元気なのだろうと薫は 上を見上げ剣心の顔を見るととても生き生きとしていた。まるで宝物を見つけよう としている子供のよう・・・・・。 「着いたでござるよー!薫殿!」 長い階段を登りきりいきが切れ掛かってる薫をよそに嬉しそうな声がする。 薫は大分体が落ち着き始めた。」
「薫殿!早く前を見てみるでござる!」
深呼吸をした後ゆっくりと顔をあげてみて見るとそこには言葉を失うほどの美しい 光景がそこにはあった。祭りの提灯はまるで宝石のように光り、遠くの建物の明か りは輝き、まるで宝石箱の中にいるようだった。 「わぁー!綺麗!すごーい!」 「これだけではないでござるよ。薫殿。」 「え・・・・。」
薫は剣心を方を振り返ろうとした瞬間、薫の後ろで何かが空に打ち上げられた。 ドーンと大きな音を立てて巨大な花が咲いた。それは・・・・・ 「花火・・・花火だわ!すごい!こんなに近くで!」
「拙者はこれを薫殿に見せたかったでござるよ。ここなら良く見えると聞いて。」 「本当!よく見えるわ。」
「薫殿・・・。」
無邪気にはしゃぐ薫を優しい穏やかな目で剣心は見つめた。 昔の自分ならありえないことだった。自分の手で妻、巴を殺し、 それから支えとなるものはいなかった。 いや作らなかったというのが正確だろう。
巴の時のような事を恐れて・・・・。で も、それも変わった。薫に会ってから。 薫は自分といると危険だと承知でそばにいてくれた。 それがどれだけ支えとなったか。
今から言う事に薫はどう思うか。受け 止める? 拒絶する?
剣心の心はそんな不安でいっぱいだった。 そんな時薫が剣心に 話し掛けた。 「ねぇ、剣心。私剣心に言いたい事があるの。」
「え・・・?」 「私・・・・・剣心が好きだよ。」 「・・・・!」
(聞き間違いか。今薫殿は拙者を・・・。)
一瞬我が耳を疑ったが確かに薫は剣心のことを好きだと言った。 薫は少し頬を赤らめ真剣な目で剣心を見つめている。 剣心の心はいまや爆発するかのように高鳴っていた。
「私、剣心の支えになってあげたい。剣心が望む限り私はそばにいたい。剣心 は・・。」
思わず剣心は薫を抱きしめた。 今の自分の気持ちを伝えたらどんなにいいか。 でも、そうすれば薫の身はもっと危うくなってしまう。 だが、おさまりきらないこの 気持ちはどうする事もできない。薫へのあふれる想い、どうか・・・・ 「薫殿・・・拙者も・・・・・・・薫が好きだ。・・・・・」 失いたくない、守りたい、そばにいたい。 剣心の心は薫への想いが膨れ上がっていた。 (もう、巴のような事はしない。薫殿が生きている限り拙者の居場所はここにあ る・・・。) 「薫・・・愛している・・・・」 「・・・・うん・・・・・・・」 月夜の下、静かな草木の音と穏やかな風の音で二人を包んだ・・・・
END |
んきゅ〜!!(←え) とってもピュアで、素敵なお話でした。 緋村さん、薫殿に最高のプレゼントをあげられましたね。 そして最高の瞬間をてにいれちゃったんですね。 やっぱり二人は幸せになってもらわなきゃ困りますヨ! 美咲は星霜編を受け入れられなかった小さい人間ですので… 花火といったら美咲にも思い出がありますねぇ。 東京ディ●ニーランドで、最後のショー みたいなのを超並んで最前列で見たんですよ。 視界いっぱいの花火、何だか涙が出そうになりました。 そんな去年のことを思い出しちゃいました。 優月さん素敵なお話有難うございましたー! これからも幸せな二人を応援しましょっ! 2004−9−27 up |