What’s the matter?

what’s the matter?【2】

                           

「なぁ、剣心、酒ねーのか、酒!」

 

(ったく……。この男は礼儀ってものを知らないのか……)

 

左之助は家に入ると同時にお酒を要求してきたのだった。

そう思い苦笑しながら剣心は奥の部屋から酒を持ってきた。

 

「お! 待ってました! さぁ、飲もうぜ剣心! 

今日は嬢ちゃんもいないんでぇ、まぁ、パーッとやろーぜっ♪」

 

 ただでさえ薫がいなくて不機嫌だった剣心をさらに不機嫌にしてしまった事を

とうの左之助は気づいていない。

 

「ああ……」

「なぁ、剣心? なんかおめー機嫌悪くないか?」

「なっ、なんでござるか? そんなことないでござるよ」

「そ〜か? じゃあ、ちょっと一つ聞いていいか?」

 左之助が少し深刻な顔になった。

 

剣心は不思議に思いながらも頷く。

「なぁ……。剣心。おめー、嬢ちゃんの事愛してるか?」

「ブッ!!」

 

 真剣な顔をしてイキナリ「愛してるか」と言われて剣心は勢い良く酒を

左之助の方にふきだしていた。

 

「なっ、なんでござるか、イキナリ……」

「いいから真面目に答えろよ」

 剣心にふかれた酒を手ぬぐいでふきながら言った。

剣心は恥ずかしかった。

本当に恥ずかしかった。

彼の耳はまるで紅葉のように赤くなっていた。

 

「何照れてんだよ、ここにいるのは俺だけだろ? 

嬢ちゃんの目の前でこんな事聞いてるワケじゃねぇーのによ?」

 

からかうように左之助はカラカラと笑った。

「コホンッ」

 

 剣心はワザとらしく咳をした。

さっきとはうって変わって左之助は真剣に剣心を見ている。

「……。愛してる……でござるよ」

「どれくらいだ?」

 そこまで言わせるのかという風に剣心は苦笑した。

 

「彼女なしでは…生きてゆけないくらいでござるよ。

薫殿に出会わなかった自分を想像すると恐くなるくらいでござる。

愛しているなんていう言葉では足りないくらいでござるよ…。

しかし、もしこの気持ちをその言葉でしかあらわせないというなら。

拙者は何度でも……言いたいぐらいでござる……」

 

剣心は言い終わるとさらに真っ赤になった。

 

そして小さい咳を一つした。

「だってさ、嬢ちゃん」

「!?」

 剣心は左之助の言っている事が分からなかった。

「早く出て来いって言ってるだろ? おい!」

 ―――スッ―――――

 戸が開いた。

やったわと言う顔をした恵と剣心に負けじと顔を真っ赤にした薫がそこに立っていた。

「かっ薫……殿!!」

「へへ! やったな女狐!どうでぃ、俺もやるだろ?」

「まぁ……そうね、あんたにしちゃあ上出来! 上出来! ホホホ♪」

「左之……ハメたでござるな……」

 

剣心は左之助に対する怒りよりも薫に自分の胸のうちを聞かれてしまった恥ずかしさの方が勝っていた。

 

「剣さん……あのね、さっき薫さんには言っておいたんだけど……」

「……なんでござるか、恵殿」

 

 剣心は少し恵の事も怒っているらしい。笑顔がひきつっていた。

「薫さんと剣さんの間に子供ができてるの」

「え!?」

 

 剣心は勢い良く薫の方を見た。

薫は下を向きながらも、コクンとうなづいた。

 

「だからね、子供が先に出来る……っていうのも何だし……。

剣さんに薫さんをぷろぽーずさせるのもどうかしら、なんて思ってね。

左之助に協力してもらったのよ」

「そうなんでぇ。まぁ、ちょっと手荒かったがこれでいいんじゃねぇか?なっ、恵」

「ええ。じゃあ私達はそろそろ……。行くわよ、左之助!」

「おう!……ってお前耳引っ張るんじゃねぇ!!」

 

――――ガタッ――――

 

 2人が出ていった。この部屋にいるのは薫と剣心だけ。

「薫殿……」

「剣……心……?」

 剣心はゆっくりと薫の唇に

自分の唇をかさねた。

「幸せになろう、一緒に。薫殿のおなかの中の……この子と一緒に……」

 

 ――優しい涙が綺麗な月夜を飾った―――

 

 

 

END

もう何も言うことはありません。(笑)感想はBBSにてお待ちしておりますv

 2004.4.27 up!(リンク切れのため、upしなおし)//第一回up2002、1、16

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