*…ちゃんと言って。…* |
「ちゃんと言って。」 「はぁ?」 神谷道場の縁側。 いつもは剣心やら弥彦やら恵やらで 賑わっているその場所には 今日は何故か、左之助と薫だけ。 今、あきれた声を出したのは 左之助のほうだった。 目を点にして薫を凝視する。 「だからぁ…」 長いポニーテールをちらちらと風に遊ばせて 彼女は少し怒り口調で左之助に言葉を返す。 「薫って呼んでみてって言ってるの。」 左之助はその大きな手を額にあてて、はぁと タメ息をついた。 「何でタメ息なんてついてんのよ」 縁側で左之助と真正面に向き合って座り 足をブラブラさせながら薫は言った。 「嬢ちゃんは嬢ちゃんだろぉーがよ…。」 ぷぅと頬を膨らませている彼女の隣に 左之助がどっかりと腰を降ろすと 左之助は心底困ったような顔をしてそう言う。 「だって恵さんのことも妙さんのことも そのまま呼ぶじゃない?何で私だけ嬢ちゃんなのよ?」 「あ〜めんどくせぇ…」 頭をがりがり掻くと左之助はバツの悪そうな顔をした。 それもそのはずである。 気恥ずかしくて呼べたものじゃない。 しかも、ここには薫と左之助のみ、 自分が持つかどうか責任は持てない。 むしろ、相手は薫だ。 薫は剣心に恋をしている。 それくらい弥彦が見ても分かるくらいだ。 ――なんで惚れたんだろ。 左之助は薫の顔が近くにあることに気がついて 慌てて一歩ひいた。 「言ってってば。言うまで今日はご飯ナシよ」 「どぉせ嬢ちゃんの飯だろ…」 そうつぶやくと薫お得意の右パンチストレート炸裂。 人をグーで殴っておきながら薫はやっぱり 名前で呼んでよ、一回だけ、とせがむのであった。 「あ〜仕方ねぇな…か…かっ…っ…!」 薫は左之助の顔を見ながらにこにこしている。 「かっ…か…える。」 「はぁ?かえるが何処にいんのよ」 今度は薫があきれた声を出す番だ。 「うるせぇな…かお…」 今度こそ、と薫は握りこぶしを作ってる。 「かお変だぞ。」 握りこぶしはそのまま鉄拳になった。 「…もういいよっ」 薫は少し寂しそうな顔をしたが 玄関の方から剣心の声がすると さっと立ち上がり玄関へ向かっていった。 「あ〜…本命のお帰りかい…」 左之助はのろのろと起き上がると 自分も小さくなる彼女を追って玄関へと向かうのだった。 「薫…。馬鹿野郎、ちゃんと言えるんだよ…」 頭をまたガリガリと掻きながら 小さくそう言った。 |
★MAKIさんからのあとがきデス★ いつもすみません(笑)さのめぐ派が多いこの風花庵サマでサノカオ布教(?)をやっておりますMAKIです。こんな小説(?)ですが読んでくださって有難う御座いました。 **************************************** 今回も可愛い物語でしたね〜★さの、照れすぎ。可愛い。(笑)感想はbbsで^^ 2002.3.14up |