いつかきっと【みお様より頂きました】 |
『いつかきっと』
「どういうこと?左之助」
薫は険しい表情で、剣心はただ目を丸くして左之助を見ている。 幸い、弥彦は留守だった。 「どうもこうも…」 左之助は困り果てた顔で、少し離れたところですやすやと眠る幼女を垣間見た。
「何か心当たりあるんでしょ?でなきゃ、こんな小さい子が、あんたのこ と…」
剣心はなんとか薫をなだめようとしているが、その努力も無駄に終わりそうだ。 薫は今にも口から火を吹きそうな剣幕である。 それにしても、と剣心は諦めて追求にまわったらしく、 座ったまま頬杖をつく左之助に問いかけた。
「本当に心当たりはないのでござるか?」
左之助は絶望的な気分になった。
「お前までそんなこと言うなんて…」
泣きたくなってきた、と左之助は頭を抱えた。
「日頃の行いよ」 呆れながらため息をついた薫は、穏やかな寝顔の幼女を見る。 その視線の先で、幼女は長い夢から覚めた。 「ほら、起きたわよ。あんたの…」 薫が続ける前に、幼女は叫んだ。
「とうたま!」 左之助は、再び出口のない迷路に迷い込んだような表情を浮かべた。 「おとなしくしててくれよ…頼むから」
うん、と頼もしく返事をする幼女を、左之助はため息をつきながら背負う。
―仕方ないじゃない。私たちじゃ駄目なんだもの…。
そう言って困り果てた薫と剣心を思い出して、また大きなため息を吐く。 幼女は、左之助の姿が見えぬと泣き出す。薫や剣心がどんなにあやしても無 駄で、左之助が顔を見せるとぴたりと泣き止む。これでは離れようがない。 諦めた左之助は、連れて歩くことにした。
―けど、これならコイツの母親も見つけやすいかもな。
転んでもただでは起きない左之助であった。 「左之さん、その子は?」
「左之さんって、子供いたんスか?」
会う人会う人、皆揃いも揃って、本気とも冗談ともつかぬことを好き勝手に 言っていく。左之助には思わぬ誤算であった。 背負われている幼女は、左之助の子供と間違われる度、愛想を振りまくよう に笑顔を見せる。 「そういえば、似てますね。左之さんと」
人間の先入観とはなんと恐ろしいものか、左之助は身をもって知った。
―冗談じゃねェや。
左之助には、子供をもつような覚えはない。
―とりあえず、アイツのトコへ預けよう。 どうにもならなくなった左之助は、 幼女を背負ったまま小国診療所へ、足を速めた。 「まぁ、あんたの話は半分くらい聞いておくわ」
恵は、窓の外を眺めたまま、ため息まじりに呟いた。 恵の怒りが少しおさまったように感じた左之助は、一安心といわんばかりに 胸をなで下ろす。 けど、と恵は腕組みをしたまま、左之助に冷たい視線を向けた。
「この子があんたを父親と呼ぶからには、何か理由があるんでしょう?この 子の母親、本当に知らないの?」
恵は、左之助よりも幼女のほうを気にかけ始めた。左之助にとっては、問題 はすりかえられ、結構なことだが、それでも無関心というわけにはいかな い。
だからよ、と左之助は頭をかきながら、足を組み直して言った。
「俺も考えたけど、覚えはねぇんだ。そりゃあ、花町で遊んだことはあるけ どよ…」
恵は黙っていたが、左之助は続けた。
「ま、何にしても、こいつの母親を探すのが第一だな。母親の元へ帰れねぇ んじゃ、あんまり不憫だしよ」
いつもの笑顔でそう言った左之助の言葉に、恵もそうね、と同意した。
「あやめちゃんやすずめちゃんは、友達ができて嬉しいでしょうけど…確か にこのままでいつまでも、という訳にはいかないのも事実ね」 ああ、と左之助は椅子から立ち上がり、悪ぃけど、と恵を見下ろして言っ た。 「アイツ、ここで見ておいてくれねぇか?俺は母親探しに行ってくっから よ」 しょうがないわね、と恵も立ち上がり、奥へ視線を向けて呟く。 「私ができるのは、このくらいしかないものね…」 幸い、というべきか、診療所へきてから幼女はずっと笑っている。誰かと遊 ぶのがよほど楽しいのだろう。玄斎や恵を見ても泣くことはなかった。 ―これなら大丈夫だろう。 安心した左之助は、彼女の母親を探すべく、町へ出た。 ―続く―
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緋田みお様から頂きました〜vv連載作品でございますvvうわぁ、もうすごい気になります!!私はみお様の作品が本当に好きでみお様に無理をいって、みお様の作品をここに載せさせていただいているんです(><)美咲はもうこの続きを知っているんですが…(笑)皆さんは、もうちょっとだけ楽しみにしてくださいね☆ 2004.8.3. |