*…makiさんより…*

玩具〜おもちゃ〜

 

「左之助ぇー!ねぇ左之助ってば…!!」

「あぁ?」

左之助は薫の声を聞き眠たげに顔を上げた。

 

「いるんでしょ?返事くらいしなさいってば!」

薫の声のトーンは一層高くなり足音も近づいてくる。

「返事してんのが聞こえないのかねぇ あの嬢ちゃんは」

少しずれた赤い鉢巻を結びなおして左之助は座り、またあくびを一つ。

――ガラッ。戸が勢いよく開き、薫が顔を出した。

 

「もーっ何で剣心の部屋にいるのよ?」

「別にいいじゃねぇーか。 嬢ちゃんの部屋の方が良かったか?」

「そういう意味じゃなくって!」

 

左之助の一言に単純に反応する薫を見て左之助はカラカラと笑いながら立ち上がった。

「じゃあどういう意味でぇ?」

「もーっそのコトは良いわよっ」

 

よく見ると先ほどまで胴着に身を包んでいた薫は

すっかり雰囲気を変え、着物に身を包んでいた。

 

「馬子にも衣装」

「なんか言ったぁ?!」

 

薫はお気に入りらしい桜の着物を着ていた。りぼんも優しい桜色。

その綺麗な桜色に艶やかな黒髪が映えて―――、、、と

うっかり薫に見とれてしまった左之助だったが、ここは元喧嘩屋、左之助。

すかさず皮肉を言ってみせたのだった。

 

「まぁそれは置いといて買い物付き合ってくれない?どーせ暇でしょ?」

「あぁ?そんなもん剣心か弥彦に頼めよ?」

 

薫は分かってないなぁ、という調子で左之助を見上げた。

「頼めれば頼んでるわよ。剣心は弥彦とどっか行っちゃったの。」

「だからって何で俺が」

 

手をヒラヒラと動かして左之助は部屋を出ようとした。

 

「何言ってるの!左之助っ!この道場の食客のくせに!それくらい手伝ってよ!」

薫はすかさず左之助の耳を引っ張った。

「ってぇ・・ってて!!離せコラッ」

 

左之助が暴れるので薫も耳を引っ張りっぱなしにするには、少々疲れた様子。

でも必死に離さないようにしている。

「行くの?行かないの?」

「イタッ 分かったっ行きゃーいいんだろ行きゃー!!」

小さな薫の手を左之助は、ぶっきらぼうに離させた。けっして乱暴にではなく。

 

「あーっコイツ絶対刃衛よりは強ぇーよ あーイタッ」

「へりくつ言わないっ」

薫は左之助の服のはしを引っ張って剣心の部屋を早々とあとにした。

「お米と、赤味噌…白味噌…それにお塩とぉ…」

「重い」

何だかんだ言いながら、左之助はちゃんと買い物にきてはいた。

そりゃあ確かに、毎日世話になっているし

男としてできることはしてやりたいのが本音だった。

 

「五月蝿いっ」重い、と愚痴を言った左之助に薫はお得意の右パンチで攻撃する。

「嬢ちゃんは軽いもんばっかだしよ」

それをヒョイとよけ左之助は薫の方をチラリと見る。

 

「打たれ強さが自慢なんでしょ?それくらい軽い軽い♪」

左之助は、米と塩と味噌、そして大根を抱え前が見えない状態になっていた。

 

「もうこれで終わりっ。有り難う左之助、助かったわ」

「終わりじゃねぇと俺は死んじまうぜ…」

「お礼言ってるんだからねっ」

もう日が暮れだした。帰り道を二人は無言で歩いていた。

喧嘩疲れをしたのかは定かではないが二人ともゆっくりと歩いていた。

ドサッ。

その沈黙を破るように薫の手から買ったばかりの砂糖袋が一つ、落ちた。

「あ…」

慌てて薫がしゃがみ、その袋を取ろうとした。

 

「……左之助?」

 

その動作よりも一足早く、左之助が屈み、砂糖を肩の上にのせた。

 

「……ほら、そっちもよこせよ重いだろ」

 

「…大丈夫」

 

夕日が二人を照らしていた。

 

「大丈夫、軽いよ」

 

「そーか」

 

「おーいっ左之助っ薫ー! 今帰ったぜー」

 

「ただいまでござる、薫殿」

 

弥彦と剣心の声が聞こえる。

 

「おかえりー弥彦、剣心!お土産は?」

 

「ねぇーよ」

「何ぃ?」

 

左之助とゆっくり歩いていた薫は小走りして二人に駆け寄った。

 

「足がふらついてるぞ」

左之助は薫に聞こえないようにそうつぶやくと荷物を持ち直した。

 



                               END

makiさんのアトガキ〇

こんな変な文章を読んで頂いてありがとうゴザイマス。この物語を通して、「左之助」のさりげない優しさっていうのを…表現したかったのですが…皆様に伝わったでしょうか…(><)左→薫、っていう感じですね。性懲りも無くまた、左薫書こうと思っていますので宜しくお願いします(笑)

 

〇美咲から〇

素晴らしいお話ありがとうございます!とっても可愛いお話ですね。左之助の優しさもとってもよく伝わってきます。次回作も楽しみにしていますね(^^) 

 

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