道行き【まさし様より頂きました】

道行き

 

「はぁ。」

左之助は溜息を吐いていた。

というのも剣心と薫が長崎へ船旅に出掛けてからはや一週間が経とうとしているのだが

何の音沙汰も無いからだ。

尤も、左之助は薫から神谷道場を泥棒から守るための用心棒として

留守を頼まれていたので左之助もそれに従い今日も

大人しく何処へも出歩かずに留守をしている、はずも無く、

いつもつるんで遊んでいる仲間達と賭場へ遊びに行き、先程の溜息はその帰り道であった。

 

尤も溜息を漏らす辺り、おそらくは賭場で散々な目に遭ったに違いなく、

そうでなければ溜息を漏らすはずもなく、

第一神谷道場へ帰るはずも無い。

左之助としては賭場でたんまり稼いで、

その金で仲間達と旨い酒と肴に有り付きたかったのだが、

それもどうやら無理と悟り大人しく神谷道場へ帰る仕儀となった。

 

「はぁ。」

 

左之助が二度目の溜息を漏らした時であった。

どこからともなく自分を呼ぶ声が聞こえたのであった。

左之助が振り向くと、薬箱と患者から薬代の変わりに受け取ったであろう野菜を抱えた恵の姿が見えた。恵は左之助に追いつくと、薬箱と野菜を左之助に持たせるという彼女にしては至極当然のことをして、

恵は一人悠々と先を歩いていった。

左之助は半ば諦め顔でそれでも恵に追いつき一緒に歩くことにした。

二人は暫く無言であったが最初に恵が口火を切った。

 

「左之、あんたちゃんと道場の留守をしてるんでしょうね?」

 

いきなり痛いところを衝きやがる、と左之助は思ったのだが一応、ああ、と頷くに留めた。

だが恵は追及の手を緩めずに、本当に?なぞと訊いてきたので左之助が黙り込んでしまうと、

恵は、まあ別に構わないわ、剣さんと薫さん、二人で船旅を楽しんでいるのだからあんただけが留守をするなんて不公平というものよね、と恵にしては珍しく左之助を庇うような科白を吐いたので

左之助は、やっぱり恵は俺を好いているんだな、と一人悦に入っていた。

 

「ところで恵、お前、診療所に帰らなくていいのか?このまま俺と神谷道場に行くつもりか?」

 

「そうよ、今晩は道場に泊まるつもり。あんたろくに料理も食べていないんでしょ、その野菜で今晩はあたし

があんたに料理を作ってあげるから感謝しなさいよ、いいわね!」

 

うん、と左之助は頷いたのだが、恵が俺に料理を作ってくれるとは意外だなあ、と左之助は想った。

(やっぱり恵は俺に・・・)

 

左之助はそんなあらぬ妄想を抱いていると、道の脇の田畑に農作業を終えたと見られる老夫婦の姿が眼に飛び込んできた。老夫婦は互いを労わるように、地面に腰を下ろし楽しく談笑していた。

 

(俺も将来、恵とあんな風になれたらいいなあ)

 

左之助はそんなふうに想った。

人は一人では生きられない、互いを思いやり、支えあい、

それで初めて本当の意味で生きていけるのである。

そのことをあの老夫婦は身をもって俺に示してくれているのかなあ、と左之助は想った。

 

(俺には恵という、かけがえの無い女がいる。俺は生涯、恵を思い遣ってやりたい。そして恵も俺を少しでもいいから想って欲しい・・・)

 

そんな物思いに耽っている左之助を恵は覗き込むように見て、どうかしたの?と問い掛けてきたので

左之助は答える代わりに持っていた薬箱と野菜を地面に置きそっと恵を抱きしめた。

恵は抵抗せずにただ左之助の耳元で何か囁いたようであったが、左之助にはわからなかった。

二人が道場に着いた頃にはもうとっぷりと日が暮れていた。

 

―了―

                    

まさし様から頂きました。さのめぐ小説です。皆様、いかがだったでしょうか^^とても可愛らしくそしてメッセージ性の強い素敵な小説でしたね。ってか左之助可愛いです。ちょっと弟にしたい感じv(←左之助にしちゃ偉い迷惑だよこりゃ)

左之助の耳元で恵さんは何を囁いたのでしょうか?気になります。気になって夜も眠れません。そんな素敵な書き結びをなさる

まさし様のテクニックですね。感想BBSなどで、感想お待ちしております。

まさし様、素晴らしい小説有難うございました。                    2004.3.4

BACK