2004年6月のお題『初夏』に挑戦してくださいました。夏風邪【チャン・イー様より頂きました】

『夏風邪』

 

 

  自分で自分の薬の調合をする。

 

  症状としては、頭痛・寒気・軽いのどの痛み。

  風邪の初期症状である。

  医者だから、自分の体には人一倍気をつけているつもりだが、やっぱり人間

  だから一年中元気という訳にもいかない。

 

  白湯で薬を飲んだ。

  幸い、今日は休診日だ。

  玄斎先生は孫二人と泊まりで出かけてしまった。

 

  本当なら自分も繁華街に行って夏向きの着物を新調するつもりだったが、

それは無理そうだった。

 

「ついてないわね」

 

  独り言をつぶやくと、朝から敷きっ放しの布団に潜り込んだ。  幸い、熱も高くない。

  一日、寝ていれば良くなるだろう。

 

  あくびをひとつ。

  ゆっくりと目を閉じた。

 

  うつらうつらと夢を見る。左之助が、こちらを見ている。

 

「おきてるのか?」

 

  遠くから声が聞こえた。

 

  「ううん、寝てるの」

 

視界がゆらゆら揺れている。

 

  「具合でも悪いのか?」

 

  「風邪をひいたみたい」

 

  「そうか」

 

額に暖かな感触を感じる。

 

  「熱、あるんじゃねえ?」

  「そうかしら」

 

  夢にしてはずいぶん現実的な夢ね、と恵は思う。

  そのうち、声が聞こえなくなった。

 

  「俺にうつして早く良くなっちまえ」

 

  耳元でひそかに、左之助の息使いが聞こえる。

 

  「そうね、そうするわ」

 

  声に出そうとした瞬間、唇に体温を感じた。

  不思議な夢、と恵は思ったが、もう億劫で目を開ける事は出来なかった。

  やがて、声も音も遠ざかっていった。

 

  目が覚めたら、もう夕方だった。

  起き上がってあたりを見回した。

  妙に現実的な会話を左之助と交わしたような気がしたのだが。

  首をかしげて、考える。

 

  「ごめんください!恵さ〜ん!!」

 

  お勝手から薫の声が聞こえる。

 

  行くと、薫が手に土鍋を持って立っていた。

 

  「どうしたの?」

  「風邪ひいたんだって?今日一人なんでしょ。」

 

  土鍋を渡された。

 

  「剣心がおかゆ作ったの。ご飯作るの大変でしょ、うちに来るのも辛いかな

  って思ったんで持ってきたの」

 

「ありがとう」

 

  「私、今夜泊まろっか?」

 

  「いいわよ、そんな大した事ないし。薬も早めに飲んだから大丈夫」

 

  「・・・そう?」

  心配顔の薫に、笑って答える。

 

「ほんとに大丈夫よ、ありがとう」

 

  門のところまで、薫を見送った。

  じゃあ、と言って歩き出した薫を、恵は呼び止めた。

 

  「ところで、どうして私が風邪引いたって知ってるの?」

  「左之助から聞いたのよ」

 

  お大事に。そう言って薫はにっこり笑って手を振った。

 

 

  恵は、言葉を失ったまま遠ざかる薫を見ていた。

  急に、唇が熱をもってくるのを感じながら、立ちすくんでいた。

 

 

 

  左之助が、風邪の症状を訴えて診療所にやってくるのはそれから2日後のこ

  とである。

 

 

 

END

                    

きゃーん!小説投稿フォームをご利用頂き、チャン・イー様から頂きました素敵小説です!寝ぼけている恵さん可愛すぎです!!左之助じゃなくてもちゅーしたくなるYO!(暴走)そしてそして、『剣心が作ったおかゆ』もポイントですねぇ(笑)薫ちゃん、おかゆも作れなそうだもんなぁ。恵さんのセリフ「ううん、寝てるの」が本当に可愛すぎて美咲のツボど真中ストラーイク!ゴールの網をこえました(競技まざってるやん!)

左之助v恵だけでなく、薫ちゃんも出てきたりして、まるで原作を読んでいるような気分になりました。

チャン・イーさん、本当に素敵なお話有難うございました★       2004・8・18

 

皆さんもぜひ投稿してくださいねv⇒小説投稿フォーム(今月のお題もちぇっくでござる!)

 

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